護身術のプログラムを選ぶ際の注意点

暴力の実態を理解しているか?

女性の恐怖感を煽るような、写真や文章が使われている場合があります。例えば、暗い夜道を歩く女性、殴られている女性など。このように女性の恐怖感を煽ろうとする護身術教室は良い教室とは言えません。

その理由は、まず護身術は怖い物であると思い込んでしまう点と、そうした教室では、女性がもっとも遭遇する確率の高い、デート・レイプやドメスティック・バイオレンスについて一切触れないと思われますし、ジェンダー・ハラスメントやセクシュアル・ハラスメントについても触れないでしょう。

そうした教室では、見ず知らずの他人による暴力を受けたときの、身体的な抵抗の訓練に限定されますので、もっとポジティブなイメージを醸し出す教室を選んで下さい。

レッスンで、どのタイプの暴力について学習するかも聞いて下さい。インストラクターが「女性が一般的に受ける暴力」と回答したら、「一般的に受ける暴力とは何ですか?」と質問して下さい。夜道でバッグの引ったくりにあった場合の抵抗と言われたら、女性の護身術に関する知識が全く無いインストラクターだと思って下さい。顔見知りによる攻撃、ハラスメント、精神的暴力などを扱う授業は評価できます。

過剰な期待を煽っていないか?

パンフレットに記載されている約束事を見て下さい。「もう恐怖とは、さようなら」「完全に安全で、自分に自信が持てる」「コンバット・マシーンになれる」「一度習えば、一生使える」など、とても非現実的な内容です。自分の嫌なことと許せることの境界線の示し方や、暴力を事前に予測し回避する方法、口頭や態度で身を守る方法の記載のある物を選んで下さい。

コースの所要時間は適切か?

初心者の授業で、武器を持った攻撃に素手での抵抗を教える授業であれば、初心者にはレベルが高すぎます。プログラムの内容によっては異なるので一概には言えませんが、初心者向けのコースは12〜24時間ぐらいで修了()するものを選ぶと良いでしょう。それ以上短いと、教える内容は未熟になってしまいますし、それ以上、長いと、護身術へのモチベーションが、それほど高く無い女性にとっては、長すぎると感じることでしょう。

その他の注意点

ここからは、よい護身術の教室を探すための注意点を紹介します。ここで紹介する注意点の多くは、護身術と武道・格闘技を混同してしまうことから発生しています。

これらの注意点は、女性だけでなく、男性が護身術教室を選ぶ際にも、共通して言えることです。

素振りばかり繰り返す

実際に物体を打つ練習をしないと力を出す感覚が学べません。素振りも大切ですがミットやサンドバックを打つことが必要です。

多すぎるランク

武道、格闘技、護身術の中には、段や級、多数の帯(ベルト)が多く設定されているものがあります。こうしたランク分けは管理上必要なものもありますが、多くの場合は道場が収入を得る手段となっています。多過ぎるランク分けは習うのにお金が掛かりすぎるだけでなく、結果的に不必要に大量の技術を習うことになり、ランク分けの意味は疑わしいものです。

教える技が多過ぎる

護身術を必要としている人は、必要に迫られて習いに来ているとは言え、仕事が忙しかったり、他に趣味を持っていたりなどの理由で、もともとモチベーションがそれほど強くない人が多いのも現実です。それなのに教える技の数が多過ぎると、習う時間が長くなってしまいますし全ての技を覚えておくことも難しくなります。不必要に大量の技を教えるのは、道場が生徒を繋ぎ止めて置くための手段にもなっています。

道着に着替える

柔道着や空手着といった武道のような格好をする必要はありません。攻撃者はあなたがお色直しをするのを待ってくれません。また、道着に着替える武道は、どうしても、それを前提としたテクニックが多くなる傾向があります。

複雑な技

複雑で華麗なテクニックは習得に時間が掛かるだけでなく、プレッシャーの下では実施できません。

現実離れした宣伝文句

「一撃必殺」や「誰でも強くなれる」といった格闘術は、残念なことに存在しません。こうした宣伝文句は生徒を確保したいだけのものです。

秘伝の技

何年も修行すれば門外不出の秘伝の技を必ず習えると、暗に示したり宣伝したりする武道がありますが、経済的理由で生徒を確保しようとしているだけです。本当に口伝で秘伝を伝える武道は絶対にそれを宣伝しません。

過度の精神性

武士道精神など哲学についての長い講義は、性暴力から身を守る役には立ちません。また、礼儀作法や儀式に多くの時間を割く武道は、社会的な上下関係に服従する精神が養われますが、性犯罪から身を守るためには、そうした上下関係に立ち向かう精神を養う必要があるため逆効果です。部活動やスポーツの指導者による性犯罪が多発しているのも、こうした服従する精神に原因があります。

整然として形式張っている

練習風景を見学したときに、生徒達が整然と動作のセットを繰り返すだけでしたら避けた方が良いでしょう。自分の限界に挑戦する訓練は少々だらしなく見えるものです。

格闘術しか教えない

護身術とは「身を守ることに役立つ全て」です。格闘術は、護身術の一部ではありますが、全てではありません。例えば、暴力を予測する方法、危険な人物を見分ける方法、言葉や態度によって暴力を避ける方法、「逃げろ!」と言うのなら逃げる方法、など、格闘術以外にも学ぶべきことが多くあります。ですから、格闘術しか教えない教室は、正確には護身術の教室とは言えず、武道や格闘技の教室になってしまいます。

護身術とは自己表現である

攻撃や暴力が存在する人間関係には、必ずといっていいほど、加害者が被害者への恐れを中和するための、一方的な決めつけがあります。それは「君は可愛い女性だよ」という甘い言葉かもしれません、それとも「お前は殴られて当然の存在だ」かもしれません、それはどちらも決めつけです。護身術とは加害者に「私はあなたが思っているようなモノでは無い」と、抵抗を通して自己表現することなのです。

脚注

  • ※ パラベラムでは暴力の原因を理解するための座学を重視しているため、初心者向けのコースの24時間に、座学の6時間が追加されており、合計30時間になっています。