第7章 身体の護身術

攻撃がエスカレートして身体に及ぶ場合もありますし、いきなり身体的暴力を受ける場合もあります。その場合は、身体を使っての防衛に入ります。

ハリウッド映画では攻撃者は不死身で女性は嫌悪の眼差しで見つめられると気絶してしまうイメージがありますが、そうしたイメージが女性の身体的防衛の能力に悪い影響を及ぼしています。

身体の護身術の妨げになるもの

女性が身体的な護身術を使うにはまず、精神的に、受けてきた教育(良い子ちゃんで人に危害を加えない女性)の固定観念を乗り越える必要があります。痛みは誰にでも分かります自分の指で自分の目を突いたら痛いのです。でも、攻撃を止めさせるのために攻撃者の目を突こうと思いつきますか?実行する勇気はありますか?

私達の命を守る障害になっているのは社会的・文化的な性の有り様であり、社会的に女性では認めがたい行動と男性なら認められる行動です。女性の中には、男性が私達を守るために戦ってくれる、素敵なボディーガードの役割をしてくれる彼氏が、安全を保証してくれると思い込んでいます。しかし、男性だからと言って、戦い慣れているというわけはありませんし、何よりあなたを守ってくれるとも限りません。

あなたを守るはずの男性が攻撃者になったら?

私はこう考えます。完全に信頼出来るのは自分だけ、だから自分を守るためだったら何だってする。全ての女性に命を守ってくれる簡単なテクニックを覚えて貰いたいと私は思っています。身体的護身術はそんなに難しい物ではありませんし、今から記載するテクニックは特に運動能力が発達していなくても実施出来ます。「やられてたまるものか!」と思えば、全ての女性に護身術は実施出来ます。

自分で女性的な肉体を作っている

身体で男女は区別されます。女性はありとあらゆる努力をして、より小さな身体をつくり(補正下着やダイエット)、やセクシーさをアピールできるよう日々熱心に取り組んでいます。これらの特徴は生まれ持ったものではなく、性別や遺伝子の問題でもありません。女性になるにはものすごい努力が必要ですし、美しくなるのは苦しい事でもあります。歩き方、走り方、物の投げ方、全ては社会の作り出した固定観念の上に成り立っていて、その動きは女性の筋肉の全てを使わないような動きと言えるでしょう。女性が弱いと思われているのは、ホルモンの問題でもなく、筋肉の問題でもなく、こういう固定観念による物です。護身術では様々な方法で身体を使って身を守る事を覚えていきます。

自分の力を信じていない

女性の弱さは社会の作ったイメージです。出産は力の要る事です、子供を抱っこするのも、買い物に行くのも、家の掃除するのも。しかし、それはプライベートな範囲を超えていないため、見えにくい物です。そして何より、多くの人がそれを当たり前だと思っているからです。ところが、その力で十分に身体的な抵抗は可能なのです。

映画では攻撃者に捕まった女性が握り拳を作って一生懸命加害者の胸、腕、背中を叩いているシーンを見ますが、痛くないところを殴っているので意味がありません。そして、急所は一カ所、股間だけというシナリオになっています。それ以外に男性が痛みを感じる箇所を女性は教えて貰っていないため、どれだけ小さな力で男性を傷つけられるか知らないのです。

多くの場合、上半身の力は男性の方が勝って(そうでないケースも多々あります)いますが、下半身の力となると女性の方が男性に勝っている事が調査結果で分かっています。アメリカの調査結果で、出産後の女性でも問題無く軍隊の試験に合格できる事が立証されています。8000メートルの山を登り切った女性の登山家もいます(男性より先に女性が成功しています)。ですから、あまりスポーツをしない女性だって、自分の命を守るぐらいは出来ますよ!

痛みに怯える

もう一つ乗り越えなければ行けない障害は痛みへの恐怖です。この恐怖が抵抗の能力を小さくしてしまっているのです。抵抗すれば怪我をするという考え方はどこから来ているのでしょうか?例えば、身体的な抵抗をしてレイプされずに済んだ女性に対して、周りは「たまたま運が良かったけれど、とても危険な行動、リスクも大きく、普通だったらそんな事をしない方が良い」と抵抗を否定するような言い方をします。決して「良くやった、他の女性のお手本にもなる、大変スマートな判断だった」とは誰も言いません。

アメリカの調査結果によると、レイプで死の恐怖や痛みに恐怖を感じた女性の方が、ただレイプの恐怖を感じた女性よりも抵抗できていなかった、と発表しています。したがって、頭の中で走馬燈のように攻撃者にされるであろう事を想像してしまうと、逃げ出すために何が出来るかに集中できなくなってしまいます。

また、怪我を恐ろしい物のように想像しがちです。それは血や痛みへの恐怖で、女性の幼少期に喧嘩の経験があまりなかった事が原因と考えられます。攻撃を受けている最中はアドレナリン値が上がっているので、殴られても何も感じないはずです。そして、歯や指を一本折られても人は死にません。抵抗で痣やひっかき傷、もっと酷い怪我をするかもしれませんが、少なくともその攻撃から逃げられた、生還者になれた事、それが大事なのです。

女の子は小さいときから、喧嘩が下手だと言われ洗脳されます。それが攻撃を受けたら、服従するしかないという観念として脳裏に焼き付いてしまっています。警察でさえ、ごく最近まで女性が性的攻撃を受けたら、身の安全のために抵抗しない方がよいと助言していました。何もしないで無抵抗でいる事で、攻撃が収まるとは思わないで下さい。逆に加害者は被害者の無抵抗を「彼女はそれが好きなんだ」と錯覚し、暴力が激しくなる可能性もあります。

アメリカのレイプの調査結果によると、拳銃を持ったレイプ犯に抵抗しても、怪我をする確率は13%しか増えない事が分かっています。そして抵抗した女性達は、全く護身術の知識の無い人ばかりでしたので、ストラテジーを持って抵抗すれば、怪我をする確率はさらに低くなります。大事な注意点を記載します。先と同じアメリカの調査結果で証明されているのは、口頭による抵抗のストラテジーを実施した女性が一番サバイバーとなる確立が高いと言う事です。口頭の抵抗で怪我をした女性は29%に留まりました。ですから、身体的抵抗は最後の手段として使って下さい。

身体的抵抗では怪我をする可能性があるのでまずは、他のストラテジーを試し、それでも攻撃が止まない場合は身体的抵抗を使います。

人を傷つける事を怖れている

人を傷つける事を女性はあまり好みませんし、自分の女性としての役割・バランスや人間同士のバランスを保つ事が脅かされるのを怖れています。しかし、その恐怖を乗り越えないと行けません。自分を守るためだったら、人を傷つける事は正当です。女性が身体的護身術で人を傷つけられるようになるには、ただ護身術で教えられているようなパンチやキックが出来ればいいと言う物ではありません。まず身体よりも精神的なトレーニングを受ける必要があります。

あなたには自分を守る権利がある

自分を守る権利があれば良いだけでなく、精神的な力、そして自分に出来ると信じる心が必要です。自分の身体的抵抗の能力を知り、それを信じる権利があなたにはあるのです。能力を信じるにはそれを実感していないと行けません。だからこそ、このページは護身術のトレーニングの代わりにはなり得ないのです。

男性に抵抗できる、と読むのは簡単です。しかし、その力がどんな性質のものであるかは実際に体験しないと解りません。社会では多くの場合、男性の方が力持ちだと定義づけています。それに反して女性が少しでも自分の力を表現すると社会システムそのものが覆ってしまうので、あまり表沙汰にされません。社会全体が作り上げたフェミニンで弱い女性のイメージを乗り越えるにはまず日常生活の中でどのような動きが攻撃のそれに近いかを考えて見ましょう。

例えば、バレーボールをした事がありますね?スパイクをした事がありますね?ボールを攻撃者の鼻に置き換えて想像して下さい、鼻は折れます。1ヶ月分の食材を持って階段を上がりますね、一段上がる事に片足に掛かる力は人間の身体のあらゆる関節にひびを入れられる力に匹敵します。自分の逃げる速度がどのくらいかを確認するにはバスを追いかけてみて下さい。自分の体力を把握出来ます。

自分を守るためなら人を傷つける権利がある

相手を殴らずに、腕をバタバタさせて相手を叩いてしまうため、抵抗がうまくいかない場合があります。自分を守るためなら、相手を傷つけても良いのです。それには、2種類の権利が存在します。まず、あなたの精神的な権利と、法による正当防衛の権利です。まずは自分の身を守る価値が自分にあると言い聞かせて下さい。これが一番重要な点です。暴力を仕掛けるのは攻撃者ですが、その暴力の被害者に誰がなるかを決めるのはあなたです。そして法律も私達に正当防衛で身を守る権利を与えています。では、被害者の暴力はどのような場合、合法とされているか?

法律で定められている正当防衛

不正に攻撃を受けた場合のみ抵抗は正当防衛と見なされます。また、誰にでも正当防衛の権利があり、売春婦がレイプされても正当防衛の権利はあります。既に逃走に入った攻撃者を殴る事は禁じられています。法律が正当防衛を認めていても、攻撃の内容が重大かつ深刻でないといけません。威嚇や侮辱だけでは身体的抵抗は正当化されません。プライドを傷付けられたら防衛は正当ですが、その場合に合法的と見なされる正当防衛は、例えば相手の足を強く踏みつけるぐらいです。また正当防衛は他に全く手段が無くなった時にだけ正当と見なされます。

そして、攻撃に見合った正当防衛だけが正当と見なされます。上記に記載条件がそろって初めて抵抗は正当化されますので頭の片隅に入れておいて下さい。ほとんどの場合、裁判所は公平に判断を下してくれますが、家庭内暴力に限り、状況は複雑になります。裁判官は決まって次の質問をします。重大な身体的攻撃を受ける前に何故DVのパートナーと別れなかったのか?この場合正当防衛の立証がやや難しくなります。

生還者になる権利がある

どんな事があっても諦めてはいけません。あまり考えたく無い事だとは思いますが、攻撃を受けて大怪我をしたような時でも、身体の限界よりも先に、心がギブアップしてしまうことの方が多いのです。

痛みや怪我で死ぬわけではありません!まして、攻撃を「当たり前」と思ってもいけません。腕を骨折しても、もう片方の腕が使えます。両腕が骨折していても、頭が使えます。痛みはアドレナリン値の上昇で一時的に弱まります。意識を失わない限り、粘り強く抵抗できます。

人間の体内にはおよそ5リットルの血液が流れています。そのうち、2リットル程度までなら出血しても死ぬことはないと言われています。近所のスーパーに行ってトマトジュースを2リットル買って来て下さい。そして、濡れても良い場所でぶちまけてみてください(少しもったいないですが!)。2リットルって思ったよりも結構な量でしょう?そのトマトジュースの水たまりよりも血が流れていなければ、身体ではなく、心がギブアップしたということになります。ですから、(想像したくない気持ちはわかります!)少しぐらい血が出てもあなたは戦えるのです。

身体的護身術はどのようなものか?

トレーニング以外に身体的護身術を学ぶ方法はありません。ページを読むだけで技を身につける事は不可能です。次に記載するのは護身術の基本です。パラベラム Trainingを受けることをお勧めしますが、近所の他の教室でも良いでしょう。最後の章に護身術教室の選び方を記載しますので検索して自分に一番あったものを選んで下さい。

位置

護身術では空間や位置が大事な要素の一つです。どの地点で身体が危険にさらされているかの確認が取れますし、ストラテジーの選択にも影響します。

自分の腕を横に水平に広げてそのままグルッと一回りして下さい。その円があなたの安全地帯です。攻撃はその円の中でしかあり得ません(攻撃者が長い坊や拳銃を持っている場合は除きます)。その円の中に攻撃者が入らない限り、あなたの安全は概ね確立されています。その円の中にあなたの許可無く誰かが侵入してきたら、あなたは即危険にさらされていると思って下さい。

地下鉄のラッシュアワーでギュウギュウ詰め状態の事を言っているのではなく、自分の円の中まで接近する理由が無い状況の事を想定しています。侵入された時点であなたには口頭による抵抗で境界線を引く権利があります。あなたの安全地帯が踏みにじられたのですから、間違いなくそれは攻撃です。相手があなたに触れていなくてもですよ!

突然の侵入に備えるために、いつどんな時でも安全地帯の確認は怠らないで下さい。侵入者があった場合はあなたが一歩下がるのではなく、相手に一歩下がって貰って下さい。逃げる以外に方法がない場合は、逃げるそぶりを攻撃者に見せないで下さい。身体を大きく見せて下さい。教育により女性は身体を縮める癖が付いていますが、道を歩くときも堂々と歩いて下さい。

道で角を曲がるときには視野を広く確保するため、外側から大きく曲がって下さい。歩くときは人を避けて歩かずまっすぐ歩いて下さい。攻撃を受けて抵抗する場合、人通りの多いところで抵抗するようにしてください。平らな場所で、窓の近くは避けて下さい。

複数の攻撃者がいる場合は囲まれないようにして下さい。壁があればそれに背にするのも良い方法です。バランスを保てますし、後ろから攻撃される心配もありません。坂道や階段がある場合はなるべく上の方に自分が立つようにして下さい。自分の頭の安全を確保出来ますし、手や足の位置が相手を攻撃するのによい位置に保てます。非常口や火災用具を武器にするのも有効です。

視野を広く持ち、完全に安全を確認するまでは誰かに背中を向けないで下さい。例えば、ATMや公衆電話のボックスに入ったら機械を見ないで、ボックスの外を見て下さい。攻撃を受ける場所にも注意して下さい。暴力を受けるのが怖ければ、例えばキッチンから離れて下さい(攻撃者が調理器具を武器にする恐れがあるため)。

最後に重要なポイント。ほとんどの攻撃は直線上に実施されます。この直線をサイトラインと言います。攻撃の多くは(パンチが一番わかりやすい)まっすぐに向かってきます。サイトラインをよけるようにして下さい。相手を直視しながら、身体だけを横に移動させて攻撃を避けて下さい。

バランスを保つ

女性が教育によって教えられた歩き方や動き方は、まさにバランスを崩す絶好の体勢です。例えば、足が広がらないように、一本のライン上を歩くや、足を交差しながら歩く。座り姿勢も同様で足を組んで片方のお尻しか椅子につけない。立ち姿勢も同様、片方の足に重心をかけて立つ。これら全てはバランスを崩しやすく、抵抗を困難にします。

バランスポイントを見つける

バランスポイントの見つけ方は、まず足を腰の幅くらいまで広げてたって下さい。息を吐きながら、腰を下ろさず、かかとをあげ前に傾いて下さい。息を吸いながら元の姿勢に戻って下さい。何度か繰り返して下さい。次に息を吸いながら後ろに傾いて下さい。この二つの体勢があなたのバランスの前後の極限の位置です。

次に前後に移るときに、非常に心地の良い位置があるはずです。位置を確認出来たら、そこがあなたのバランスポイントです。膝を少し曲げる事によりさらに安定感が強まります。

このバランスポイントは攻撃を受けたときだけでなく、公共の交通の中、並んでいるときにも取ると、いざというときに即、行動できます。歩き方も同様です。少し足を開いて膝を少し曲げて、重心を身体の中心に置いて歩くようにして下さい。人混みで押されてひっくり返る事が無くなりますよ。

声を出す

身体的な力は筋肉、血液中のアドレナリン値や、呼吸や声とも関係しています。叫ぶ事は身体的抵抗のもう一つの重要な要素です。まず、攻撃者が驚き、手強い被害者の印象を加害者に与えます。叫ぶ事も一つのストラテジーとして使えます。恐怖は呼吸を止めますが、叫ぶと息を吐きます。つまり、叫ぶ事で恐怖を怒りに変える事が出来ます。血液中の酸素が増え、抵抗に必要の無い筋肉が柔らかくなります。

呼吸法の練習、そして決意を固めて!

椅子に座って下さい。足を地面に付けて下さい。手を太股に置いて下さい。目を閉じて身体を意識して下さい。肌、筋肉、嗅覚で感じれる全てのものを感じて下さい。温度は何度ぐらい?身体のどの部分が椅子に触れているか?座り心地は良いか?次に深く息を吸って下さい、肩を上げずに息を吸って下さい、吐くときはお腹、次に肺の空気を吐いて下さい。自分のリズムで呼吸を続けて下さい。

呼吸法に慣れたら、声を出して息を吐いたり、パンチをしながら息を吐く練習をして下さい。日常的に呼吸法の練習をして下さい。簡単に叫べるようになります。

声を出すときの口の開け方
欠伸をしたときの口の開き方で声を出すようにして下さい。自然に自分の声が通常よりも何オクターブも低くなります。

身を守る

安全地帯の確認、サイトラインを避ける以外に自分から自分を守る事も必要です。

舌や唇を噛んでしまわないように口を閉じて下さい。殴られたら、息を吐いて下さい、そうすることで呼吸が中断されずに済みます。腕で頭を守って下さい。片腕は頭の前に、片腕は頭の後ろに置いて下さい。肘は上を向いているのがベストです。肘で相手を突くことも出来ますし、足で蹴って抵抗することも出来ます。

攻撃者に掴まれてからでも身を守れます。一番危険なのは首を絞められたときです。命に関わる掴まれ方です。少しずつ、そして素早く、加害者に咽頭を絞められて窒息します。逃げられても、咽頭を折られてしまっていたら、呼吸は出来ませんので首を絞められたら何が何でも自分の咽頭を守って下さい。

その方法は、肩を出来るだけあげて下さい。顎を胸の方に引いて下さい、口を開けて量口の端を下げて下さい。手で自分の首回りを触って下さい。首が無くなり、咽頭も隠れ、首の全ての筋肉が緊張し、咽頭が守られています。ハッキリ言ってこのときの自分の姿は醜いですが、ミス・ユニバースのコンクールをしているわけではないので…。身を守る練習です。

後ろから攻撃者の前腕で首を絞められたら、先ほどのテクニックは通用しません。この場合は頭を横に向けて、顎を攻撃者の肘の内側に引く。私達の顎が攻撃をブロックし、締め付けがそれ以上不可能になります。

首を絞められたときの重要なポイント
例外的に呼吸を止めて下さい。呼吸器が締め付けられブロックされているのに無理に息を吸おうとすると肺に気圧が加わり、痛みが発生し、パニックが起きるからです。

攻撃者があなたを押し倒そうとしたり、持ち上げようとしたりする場合、倒れ方が悪いと怪我をしたり、意識を失ったりします。押し倒されて倒れないためには、押されるがママに身体を動かすことです。つまり、押されたら押された方に大げさに進む(攻撃者に不意打ちをかけるためです)。もっと近い距離から押し倒されたら、吸盤のテクニックを使って下さい。攻撃者に近づいて足を開いて腕で攻撃者をつかむ。自分と攻撃者の距離が短ければ短いほど攻撃者の力は弱くなります。

友達と試してみて下さい。友達にあなたがバランスを崩しそうなほど、身体を揺さぶって貰って下さい。そして吸盤のテクニックの驚くべき効果を試して下さい。時と場合によっては倒れた方が安全と言う事もあります。ですから倒れ方を覚える必要があります。ただ、ページを読んで覚えることは出来ません。護身術のレッスンで覚えるしかありません。しかし、アドバイスを幾つか教えましょう。地面に近い位置から倒れれば倒れるほど衝撃は小さくなります。したがって膝を落として下さい。間違った倒れ方をすると次の怪我が予想されます。手首をひねる、骨折する、膝を怪我する、一定の年齢を超えると骨盤や大腿骨のヒビ。

弱点

一刻も早く攻撃を終結させるのが目的なので、男性の身体の弱点を知って、その部位を集中的に攻撃することによって相手が身動きできなくなるようにします。「あ〜、股間ですね!」とあなたは思うかもしれません。そこはそこで有効な弱点ですが、必ずしも簡単に狙える部位だとは限りません。 以下に有効な部位を記載します。

こめかみ
目と耳の間にある部位です。殴る事で相手を気絶させることも出来ます。
目を傷つける事で加害者は攻撃の継続が難しくなります。目を殴ると非常に痛く方向感覚を失います。ただ、目を攻撃するのに抵抗を感じる人も多いのです。しかし、目は思いの外頑丈です。触ったぐらいでは潰れませんし、眼球が飛び出す心配もありません。攻撃者の目を殴れば相手は星が見え、あなたが逃げるのに十分な時間、ずっと痛みを感じ続けます。
目的は耳をはがすことではなく、耳を殴る事です。相手は平衡感覚を無くし簡単に倒れてしまいます。
喉頭
先にも説明しましたが、この部分は身体の中で非常に敏感な部位です。男性の喉仏を殴る事も出来ますが、喉頭が折れてしまうと相手は窒息死してしまうので、そこを攻撃することが正当防衛に当たるかどうか状況をしっかり判断して下さい。
鳩尾
重要な動脈や神経の集まっている位置です。殴れば呼吸が一時的に困難になり、気絶もあり得ます。ただ、服を着ているとその位置を見定めるのが難しいので、私はこの部位を狙うことをあまりお勧めしません。
睾丸
痛みに非常に弱い部位です。適切な位置を蹴っただけで、加害者は倒れ込みます。前を蹴ると陰茎にしか当たりませんので、攻撃者にかなり接近をして下から膝で蹴り上げて下さい。ただ、膝には幅があるので、必ずしも上手く股の間に入るとは限りません。攻撃者が足を開いている場合だけ有効なテクニックです。ただし、男性は女性が自分のその部位を狙ってくるのを想定しているので、そうそう足を開いてはくれないと思います。足を使って睾丸を攻撃するより、手を使った方がよいです。握りつぶす、抓るなど。ただし、睾丸の覆われている皮を引っ張ってしまうと、睾丸は腰骨の空間に上がってしまうので、睾丸の付け根を抓って下に引っ張るようにして下さい。感覚としては牛の乳搾りのつもりで…。
どの関節もそうですが、関節は骨より弱いです。アーノルド・シュワルツネッガーの膝はあなたの膝と同じくらい弱いのです。スポーツ選手が一番怪我をする部位が膝であるのも同じ理由です。相手の膝を蹴るもしくは折ることで、攻撃者は歩けなくなります。
足首
膝と同じく非常に弱い部位ですが、身体の末端にあるため膝のように簡単に折ることはできません。

そのほか、簡単で効果的な攻撃を記載します。鼓膜を責める(攻撃者の耳元で大声を張り上げる)、鼻を殴って折る、向こう脛を強く蹴る、緊張した筋肉を殴るか抓る、踵を足で踏む、指の関節を捻るもしくは折る、肋骨の折れやすい下から2本までを殴る、髪をつかんで頭を壁や家具や床に叩きつける。

私たちの身体は武器

自分の身体を武器として使う模範例を幾つか記載します。ただ、テクニックを知ればするほど、いざというとき、どれを使えばいいか迷ってしまうでしょう。攻撃を受けているときは、0.5秒の迷いが死を招きます。ですから、全ての技の中であなたに一番あったものを2〜3選んでそれを集中的に練習することをお勧めします。繰り返しますが、あなたの目的は加害者を苦しめることではなく、一刻も早く攻撃を止めさせることです。

一番最初に反応する部位です。相手の手をつかんだり、平手打ちをしたり。しかし、これらの反応は加害者の中では想定範囲内ですので無意味です。
平手打ち&指
耳を攻撃する場合を除き、ビンタのような平手打ちはあまりお勧めしません。十分に痛みを与えられないので、攻撃は止みません。逆に攻撃者の怒りを強める可能性もあります。代わりに掌の根元(武道では掌底または底掌と言われる部位)などとを使ってパンチのように加害者の顎を打撃するか、指を使って抓ったり髪を引っ張ることをお勧めします。
手の甲
鼻や耳を手の甲で殴って下さい。
握り拳
女性は正しく握り拳を作れないケースが多いのです。次の通りにして下さい。親指以外の指を握り込み、次に親指の関節を曲げて人差し指と中指の上に置きます。ハンマーパンチ(握り拳の小指側の側面を上から下に振り下ろす)が一番効果的だと思います。特に鼻を折る時には大変効力があります。ハンマーパンチを実施するときにはバランスを崩さないように足を肩幅ぐらいに開いてから実施して下さい。
肘は関節ですが硬く、強力な武器になります。
脚は腕の4倍強いと言われていますので、大変頼もしい武器になります。武器になる部位は、膝、向こう脛(自分も痛いのですが)、足の甲、踵(金槌のように硬くて強い)
頭脳だけでなく、頭の部位も武器になります。顎と歯(噛みつく。人間の身体の中で噛む筋肉が一番力を持っています。ただし、噛みつくことで相手が出血した場合、病気の感染が考えられますので注意が必要です。この危険を避けるために、服の上から噛みつくことをお勧めします)。額や後頭部で組み付いてきた相手に頭突きをする。
叫び
耳元で叫ぶと攻撃者の鼓膜が損傷します。

これらのテクニックだけでは、危険な状況は収まらないので、他のテクニックと組み合わせて使って下さい。防御を効果的にするには、即行動する(相手を殴る前に叫ぶ)、相手より先に殴る、全力で身を守る、状況の主導権を相手に取らせない、最後まで抵抗をする(相手が痛みのあまり叫んでもひるまないで下さい)、目的を見失わない(その場から一刻も早く抜け出す)。

脱出する

自分の感覚を使って下さい。攻撃をされると、身体は自然に身を守らなければいけないと反応します。恐怖を感じたら、それを怒りに変えて下さい。自分に話しかける癖を付けて、何かテクニックが成功したら、自分を褒めるようにして下さい。深呼吸をして、思いっきり叫んで下さい。

攻撃者に捕まったら、自分の自由になるのはどの部位かを考えて、その部位を使って反撃して下さい。手で首を絞められたら、片方の手を直角に上へ伸ばして横を向いて下さい。攻撃者の手首がひねられ、手を離さずにはいられなくなります。腕で首を絞められたら、後ろ向きに肘打ち、踵で攻撃者の足を踏む、睾丸を抓るなどして相手に痛みを与えて次のテクニックに入って下さい。

床に倒れてしまったら

攻撃者が立っていれば必ずしも不利な体勢ではありません。相手の膝や睾丸を攻撃しやすくなります。攻撃者がしゃがんできたら頭を蹴って下さい。床に倒れたときの一番の危険性はレイプされる可能性があるという点です。

まずは横向きになるようにして下さい。攻撃をかけやすいですし、攻撃者は攻撃しにくくなります。安全地帯内に攻撃者が侵入してきたら、とにかく蹴って下さい。頭、膝、狙えるところを全て。相手が少しひるんだところで、四つん這いになって立ち上がって下さい。

倒れた時点で既に攻撃者があなたの上に乗っているときは状況は複雑になってきます。自分の腰の力を使って相手のバランスを崩して下さい。膝を曲げて、勢いをつけて腰を持ち上げて下さい。そのほかのテクニックは文章にするには難しすぎて、実際に実施しないと理解出来ないので護身術の授業に参加をして覚えて下さい。

物を武器として使う

格闘用の武器の使い方を知らない限り、それを使うことはお勧めしません。怪我をする恐れがありますし、武器を落として攻撃者の手に渡る危険もあるからです。さらに、法的には武器を持って反撃すると、その武器が危険な物であればあるほど、あなたの攻撃者に対する罪状は重くなります。だからこそ、身の回りにある物を武器代わりに使うことをお勧めします。

たまたま、そこにあった物を掴んで攻撃者を殴る事も出来ますし、例えば攻撃者があなたの手の物を奪おうとしたら、数秒間物の引っ張り合いをしてください。そして突然物を離して下さい。攻撃者はバランスを崩します。以下に身近にあるもので利用できる物を一部リストアップします。

専門家によると、ナイフなどの武器や、日用品を武器とする場合も含め、あらゆる物は、持ち方が一番重要だそうです。持ち方によって、何でもない日用品が強力な武器に変わります。また、持ち方は、その物体の重心を感じられるように柔らかく持つ必要があります。

重たい物
攻撃者が部屋に入るのを防止するために、タンスを扉の前に移動します。棚を攻撃者の上に倒せます。
あまり重たく無いもの
アドレナリンの上昇のおかげで、軽い家具であればもちあげられますので、それを攻撃者に投げつける、あるいは持ち上げた家具で窓を割って外部にあなたの叫び声を響き渡らせる。
軽い物
人間はとっさの反応で投げられた物を受け取ろうとします。攻撃者があなたの投げた物を受け止めたら、相手の手はふさがりますので、膝を狙って蹴って下さい。攻撃者に投げつける物はマフラーやクッションでもうまくいきます。
大きな物
椅子、額縁、自転車は攻撃者とあなたの間の壁の役割を果たします。それを相手に投げつけて逃げることも出来ます。
尖った物
ボールペン、鍵、爪やすり、は大体持ち合わせている物です。それらを使って攻撃者の目や喉を攻撃して下さい。ファイル、箱、本、CDケース、フォトスタンドの角も同じように使えます。
取っ手の付いた物
ケーキ作りのローラー、鍋、ハンドバッグ、両手に持ってまっすぐ相手を殴って下さい。左右に振るとバランスを崩します。
温かい・冷たい物
熱いコーヒーや氷入りのレモネードを攻撃者にかける。料理中に襲われたら沸騰中のお湯や油をかけて下さい。
危険な物
洗剤、殺虫剤、漂白剤、髪用スプレーを攻撃者の目にかける。
小さな物
小銭、鉢植えの土、工事現場の砂、粉の調味料を攻撃者の目にかける。
縄状の物
攻撃者の顔を鞭代わりにして打って下さい。あるいは攻撃者の正面でロープを横向きに八の字に振り回しながら蹴りを入れて下さい。鎖、ベルト、洋服も使えます。
棒状の物
箒、傘、空気入れなどの両端を掴んで攻撃を防止して下さい。あるいは、そのもので攻撃者の弱点を突いて下さい。

そのほか家にある物、ハンドバッグに入っている物で使える物は幾らでもあります。法的にもそこにたまたまあった物で防衛すると、あまり問題になりません。

武器を持った攻撃者の場合

まずは大きく腹式呼吸をして、ストラテジーとして何が出来るかを考えて下さい。攻撃者がお金を要求するのであれば、お金を犯人に投げて渡して攻撃者とは逆方向へ逃げて下さい。

攻撃者が単純にあなたを痛めつけたいのならば、直ちに抵抗して下さい。タイミングを待つよりも、想定外の反応で攻撃者を動揺させる方が成功率は高いです。

攻撃者が拳銃を持っていたら、相手とあなたとの距離にもよりますが、あなたの手足が相手に届かない距離だったら、方法は一つしかありません。走って物陰に隠れて下さい。もっと短い距離なら、サイトラインから外れるようにして、武器を持っている手を殴って武器を落とさせ、あなたがその武器を拾って自己防衛して下さい。

ナイフ類は攻撃者がこちらに近づかない限り怪我の心配はありません。相手が近づくと言う事はこちらも攻撃できると言う事です。攻撃者と自分の間にテーブルや車、身近にあるどんな物でも構いませんので、それらを壁代わりに使って下さい。そして、バック、ベルトなどで攻撃者の顔を殴って下さい。上手くいかなかったら、攻撃者の手を横から掴んで自由を奪って下さい。武器を持った手が自由にならないシチュエーションを作って下さい。もし、上手く武器を攻撃者の手から奪うことが出来たら、使わず、遠くへ投げて下さい。

基本的に性的暴力には武器は伴いません。なぜなら、男性は自分が女性より強いと思い込んでいるから、武器を持とうとは思わないからです。

複数の攻撃者の場合

プロの殺し屋に対しては、ほとんど為す術がありませんが、このタイプの攻撃はまれであり、ここでは複数の若い男性による攻撃を想定します。まずは囲まれないようにして下さい。壁を背にして、周りに武器になる物があるか確認し、先制攻撃を仕掛けて下さい。一人が怪我をすると、他のメンバーは怯えだし、攻撃をしなくなります。

複数の被害者の場合

逃げる選択をしたのなら、みんなで手をつないで逃げて下さい。足の遅い人が攻撃者の手に掛からないためです。抵抗をするのなら、それぞれの立ち位置を決めて下さい。お互いの邪魔をしないのが目的です。

以上が私の考える護身術の基本です。しかし、護身術は読んだだけでは、全ては身につきません。精神的な練習と体感できる護身術のトレーニングを受けることをお勧めします。

身体的抵抗の視覚化

精神的抵抗の視覚化と同じ方法で、攻撃を受けるシチュエーションをイメージングし、抵抗してみて下さい。自分に自信が持て、自分の能力を把握出来、身体的に抵抗することが癖になるのでとてもいい練習になります。

[第8章 身を守ることは自己表現すること]

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