第2章 女性護身術の基本戦略

抵抗は効果的です

暴力に一番有効な戦略は何か?この質問に正確な答えを出せるだけのデータは存在しませんが、私が調べてみつけた情報は次のとおりです。

1993年と1998年に実施されたアメリカに於ける調査では、殴る、蹴る、噛む、武器を使う、逃げる、叫ぶといった抵抗が、激しい性的虐待やレイプから逃れるのに効果があるとわかっています。加害者が武器をもった危険な状況でも抵抗は効果的だとしています。そして、抵抗しなかった女性の殆どが完全にレイプされていると判明しています。1993年の調査では、泣いて懇願したり、加害者を諭すような無抵抗の作戦を使った被害者は、抵抗した女性よりも、性的にそして肉体的に、より攻撃されたという結果が出ています。同調査は、懇願したり泣いたり、諭したりすることは、加害者を調子に乗らせると結論づけています。また、加害者の中には、女性に暴力を振るって残忍な行為をすること自体が目的でレイプする者がいて、そのタイプは抵抗されると、より強い暴力を振るう傾向がありますが、抵抗しなくても、そのタイプは残忍な暴力を女性に振るいますので、抵抗した方が良いとされています。1998年の調査では、懇願する、泣く、犯人を諭そうと試みるといった言葉による抵抗は、レイプされる可能性を高めるが、身体的な怪我を少なくすることはないとしています。抵抗の利点を纏めたものを下に紹介します。

  1. 即座に抵抗する女性は、そうしない女性よりもレイプされにくい。
  2. 抵抗する女性が、抵抗しない女性よりも負傷しやすいという事は無い。実際のところ、被害者の抵抗はしばしば身体的攻撃への反応として起こる事が示されている
  3. 嘆願、懇願、理性などにはレイプや身体的負傷を防ぐ効果は無い
  4. 抵抗する女性はレイプを回避したことによって、暴行後の症状が少ない
  5. 抵抗した女性はレイプされたかどうかに関わらず、心理的回復が早い
  6. 抵抗によって、被害者はレイプあるいはレイプ未遂を告発できる強力な物的証拠を得られる

警察の上記調査やデータ以外のアメリカに於けるレイプ調査結果によると、性暴力を終結させるための一番有効な手段は、その場で、即、身体的な反撃と口頭による抵抗することだとしています。そして、成功した女性は皆、攻撃者に対して大変用心深い態度を取り、無礼ですばしっこい女性でした。では、成功した女性達はどんなタイプの女性だったのか?それは人生の様々なシチュエーションで自立できている女性です。たとえば、車のタイヤを自分で交換できる、水漏れする蛇口を直せる、事故にあった場合応急処置を施せる、デート費用を割り勘にする。その多くの女性は子供の頃から、仲間にいじめられたり、気に入らないことをされたら自分で抵抗して解決するように教育をされていました。決して、親が間に入って事を解決していませんでした。こうした事実は自分の娘の教育のあり方を見直す良い機会にもなりますし、自分がどう行動すればいいかも考えさせてくれます。

護身術で取るべき行動

女性の精神状態が成功の鍵を握っています。後の章で感情の護身術について書きますが、攻撃者のシナリオ通りに行動する女性、攻撃者の論理に沿ってしまう女性、その場で自分に降りかかっている以上の恐ろしい事態を想像してしまう女性は有効に抵抗することが出来ません。

アメリカのレイプ以外の暴力、窃盗、わいせつ罪などの研究結果によると、この手の暴力には身体的抵抗が一番有効であるとの結果が出ています。殴る、噛む、ひっかく、蹴る、武道の技をかける、武器を使う、身体的攻撃を受けた場合、それしか方法がないと言っても過言ではないでしょう。口頭による抵抗、泣く、話し合う、理屈を述べる、協力体制を表明する、は全く効果が無く、この態度をレイプ攻撃の際に実行すると状況が悪化することもわかっています。

レイプと窃盗の場合、攻撃者が武器を持っていたとしても、抵抗が一番効果的です。成功する保証はありませんが、自分の安全を確保するためには行動することが大事であることがおわかり頂けたと思います。一番有効な態度も、無礼、用心深くなる、怒り、徹底的な身体的抵抗だと判明しましたが、実はこれらの行動に女性は一番慣れていないのです。生還者の女性は本能的にこれらの感覚を持っていたのでしょうか?ある種のタイプの女性に出来ることなのでしょうか?私の知る限りでは、この案件についての調査は一つしか存在しません。

その内容は護身術を習っていた女性の方が、そうでない女性よりも、暴力を終息させることができた、と言う物です。また性暴力を受ける確率も低く、暴力に抵抗するだけでなく、暴力を予期することも出来ていることの証明に繋がります。護身術を習っている女性は次のようなポジティブな感想を述べています。自分に自信が持てるようになった、身体的パワーが改善された、不安感、鬱状態、恐怖心、対立しないなどの性質が減少したとコメントしています。この調査で解ることは護身術を習うことで人生そのものの質が改善されると言うことです。

そんなに費用もかけず、人生を改善できるなんて素敵だと思いませんか?あなたは思うかもしれません、でも世界中の女性が護身術を習ったら…と。それは世界が変わってしまうでしょうね。

フロリダ州オーランドで行われた調査によると、レイプ防止のために、女性に拳銃のレッスンを受けさせたそうです。それを各メディアに掲載しました。すると翌年、レイプ数が前年度の88%減となり、5年後も拳銃のレッスン開始前より13%減であったことが解りました。一方、拳銃のレッスンを行わなかったオーランドに隣接した街ではレイプ率が急激に伸びたそうです。結論から言うと、レイプ犯は自分にとって危険ではない地域に目を向けたことになります。

今までのインストラクター活動の中で女性の数だけのディフェンス戦略を見てきました。各女性が自分の生きてきた環境、受けた教育、世界観、身体能力、知識を元に行動し、これらをイントラ・パーソナル・ファクターと言いますが、個人の感じ方と反応、考え方、解決の仕方によってストラテジーも変わってきます。加えて、置かれている状況によっても行動も異なります。こんなに沢山の要素があるのですから、それぞれの女性が異なるストラテジーを持つのは当然なのです。以下にストラテジーの種類を記載します。

雉の草隠れ

「頭隠して尻隠さず」という諺の元になったのは、草むらに隠れたつもりになった雉(キジ)の様子に由来しています。実はこの無意味な行動は人間の子供にも見られる反応です。ある年齢になると(18ヶ月から2歳)子供は母親が見えなくなると、母親も自分のことが見えていないと思い、顔を手で覆ってしまうのです。そうすることで自分が透明人間になれたような錯覚を覚え、安全だと思ってしまうのです。従って攻撃を受けて、何もなかったような態度を取るのは無意味なストラテジーで、更なる強い暴力を生み出す可能性があります。

ところが、護身術を習いに来る多くの女性が、何もなかったふりをすることが有効だと思い込んでいるケースが非常に多いのです。では何故、雉のような行動を取りがちなのか?では、なぜ雉のような行動を取りがちなのでしょうか?それは社会の中で傷ついたり、困ったり、出来ないと言うことを表現してはならないと教わっているからです。しかし、境界線を越えられて自分の限界を表現することは間違ったことではないのです。後に記載する章で、感情の護身術や口頭による護身術の重要性を説明していきます。

その前に一つ確認しておきます。攻撃を受けているにもかかわらず、見て見ぬふりをするのは、攻撃者に全面的に主導権と状況のコントロールを委ねてしまうことになります。自分を傷つけようとする人に危険な状況の主導権だけは握らせたくはないですね。攻撃がなかったことのようにするのは、他に方法があるにもかかわらず、それを承知の上で、自分の意志で選択した場合以外は、全く意味のないストラテジーです。忘れないで下さい、毎日境界線を引く必要はありません、あなただって機嫌の悪い日、めんどくさい事をしたくない日、勇気の薄れている日、アサーティブな日があって当然です。そういうときは境界線を引かなくても良いのです。それがあなたの意志で、その結果がどうなるか解っている上で決めたことならば。

笑うがいい、最後に笑うのは誰か?

一番理想的だと勘違いされがちな作戦は、幾つかの文言でユーモアによって状況を緩和する作戦です。成功すれば、それに越したことはありませんが、私からいわせるとこのストラテジーには、「しかし」がつきまといます。まず、誰もがユーモアのセンスを持ち合わせているわけではないし、覚えて身につく物ではありません。ですから、面白い事を言おうとして成功しなくても自分を責めないで下さい。理解出来る失敗です。

なぜなら、誰かに境界線を越えられたら、笑えないからです。ユーモアで場を切り抜けるのは、雉の草隠れの延長に過ぎません。不愉快じゃないふりをすれば、攻撃されにくくなる、と考えるのは間違った固定観念です。内心、怒りで爆発しそうなのに、ユーモアや何ともないふりをするのは不健全なことです。笑いながら、ユーモアたっぷりに「私こういうことをされるの嫌いなの」と言い続ける限り、相手はあなたが真剣に不愉快であることを理解することは出来ません。

更に言わせて頂くなら、ユーモアのセンスは世界共通ではありません。あなたにとっては面白くても相手にとっては「?」である可能性もありますし、屈辱的だと受け止められてしまうかもしれません。そうなったら、状況は最悪な方向にエスカレートしていきます。そしてユーモアには危険性を感じます。ユーモアの力比べになる可能性があるからです。私達に必要なのは、どちらがより知的に勝かではなく、自分にとって危険な状況が一刻も早く収束することが大事なのですから。

私が正しいと認めなさい!

これも良く、勘違いされがちな作戦です。攻撃者と理屈を述べ合う、攻撃者に、何故そんなことをするの?と問う女性がいます。攻撃者に自分の行動が悪いと認めさせられるとでも思っているのでしょうか?また、攻撃者に対して、これそれは良くないことだから、しては行けない、刑務所に入ることになるかもしれないと説明する女性がいます。そして話に没頭しすぎて自分がどれだけ危険な状況にあるかを忘れてしまう女性がいます。全て時間の無駄です。

情報不足が理由で男性は女性を攻撃するわけではありません。攻撃者を教育しようなどという考えは捨てて下さい。攻撃者と会話している時間はない、私には時間が無いのよ、そう思って下さい。格好良く理屈で相手を押さえようなんて思わないで下さい。護身術の目的は、どっちが正しいかを競うことではありません。逆に相手との会話に集中しすぎて、重要なことを忘れてしまいます。重要なのはあなたがその場から逃げ出すことなのです。理屈や議論は親しい人とする物で、あなたに害を与えようとする人とする物ではありません。

目には目を歯には歯を

このストラテジーだけは護身術では使わないで下さい。目を潰されたら相手の目に害を与える、歯を折られたら必ず折り返してやる、馬鹿と言われたらアホと言い返す、男尊女卑な話をされたら男性を侮辱したジョークを言い返す、お尻を触られたら、あなたは相手のどこを触るつもりですか?

目には目を歯には歯を、は護身術とは全く関係の無い行動です。この諺は古い考え方で、相手に同じ思いをさせて正義を通そうとする趣旨の物ですが、それは全く効果的でないことが立証されています。死刑執行でさえ犯罪を止めることは出来ないのです。増して、自分の感じている苦しみと同じ苦しみをどのようにして理解して貰おうと思うのでしょうか?痛みを測ることは出来ません。この話しは護身術と離れてしまいますので、ここで止めます。

復讐のために護身術を使うことは禁じられています。ですから、目には目を歯には歯をの固定観念が自分の中にあったとしても、それを実行しないで下さい。プライオリティを決して忘れないで下さい、危険な状況から早く逃げ出すことです。

身体的攻撃の場合でも口頭による攻撃の場合でも、やられたことをやり返すという考え方は捨てて下さい。まして、このストラテジーでは相手に手を出す隙を与えるわけですからもってのほかです。その上、攻撃者はハッキリとした目的があり、被害者のこの反応は想定範囲内で、やり返されても目的を達成するでしょう。

こんな話をよく聞きます。舐めるようにジロジロ見られたら、相手の身体の一カ所をしつこく見つめ返す。しかし、これも有効ではありません。なぜなら、見つめるという行動は、相手によって解釈が異なるからです。また、たとえば職場では、立場の違いから通用する冗談と通用しない冗談があります。

嫁をいびる姑は普通にイメージできますが、嫁をいびる義理の父はイメージしにくいのです。ですから、例えあなたが加害者に不愉快な思いをさせようとその股間をジロジロ見たとしても、それは一般的なイメージとしてセクシュアルハラスメントではなく「好き者の女」「娼婦」と認識されます。手でお尻を触られたから女性が男性のお尻を触り返せば、同じく「好き者女」と認識されます。

やれるものならやってみなさい!

この項目で書くことは殆どありません。皆さんもすぐに同意して下さると思います。威嚇は護身術のストラテジーではなく、状況を悪い方にエスカレートさせるストラテジーです。加害者との力比べになる、全く無意味な行為です。威嚇は最悪のシナリオの始まりであり、護身術の理念は争いを避けることこそが勝利なのです。ですから、加害者の体面を傷つけるようなことを言わない、侮辱しない、武道家のような態度を取らない、威嚇と思われるようなことを言わない。

よろしいですね女性の皆さん!ではもう一度まとめましょう。有効でないストラテジーは

  • 雉の草隠れ
  • ジョークでその場を乗り切ろうとする
  • 理屈を並べる、説得を試みる
  • 復讐する
  • 威嚇する

もちろん、上記の作戦が成功する可能性もあるかもしれませんがリスクが大きすぎますので使わないようにしましょう。では、どうすれば、良いのか?取るべき行動をリストアップします。

逃げる

とにかく暴力から逃げることを考えて下さい。逃げることは恥ずかしいことでも意気地無しのすることでもありません。ただし、逃げるとはマラソンをするという意味でもなければ100m競争をするという意味でもありません。安全な場所へ逃げるという意味です。

例えば、お店、カフェ、駅、隣の家、交番、等の人のいるところへ逃げて下さい。(人のいない方へ逃げるのは危険です、後ろから追いかけてくる加害者を見ながら走れば、転ぶ可能性もありますし、加害者の行動を把握出来ないからです)別の抽象的な逃げ方としては、加害者の言っていることを聞かない、もめ事を起こしそうな話題を避ける等です。口頭による護身術の章でこの件については細かく記載します。一つだけ勘違いしないで下さい、逃げることと「雉の草隠れ」は全く異なります。

逆説的交渉

難しいタイトルのように感じますでしょうか?大丈夫です、こういう意味です。人が何らかの行動をするとき、何かを表明したいから行動をする物です。「人はコミュニケーションを取らずにはいられない」この文言を全てに当てはめることが出来ます。従って、攻撃されたら、人は何もせずにはいられないのです。

例え被害者が身動きしなかったとしても、それは一つのメッセージとして加害者に伝わります。わかりやすく言うと、被害者がパニックで硬直している、その状態から加害者が受け止めるメッセージは「良し、うまくいった、続けよう」という具合です。何もしないでいても、それはメッセージになってしまうのです。人は無意識のうちに、必ず相手の行動や発言に意味を見いだそうとします。従ってその場に置いて、完全に意味不明な事を発言することで相手を動揺させられます。具体的な例を挙げましょう。

最近、欧米の女性護身術の間で語り継がれている話しです。武術を習っていた女性は段を取るべく練習を続けていました。いつも同じ男性と練習をしていました。ある夜、練習後の帰宅途中、ナイフを持った男と遭遇します。ところがその加害者はいつも練習していた右利きの男性と違い、左利きでした。彼女は何も考えず「あれ?ナイフを持っている手を間違えていますよ!」と言いました。「えっ?」と加害者は一瞬驚き、どうして良いのか解らなくなり、その場から逃げました。これは、女性が逆説的交渉を無意識のうちに使った例です。

しかし加害者にとっては意味不明な発言でも、彼女にとっては重大な意味を含んでいました(右利きに対してしか自分を守れないのを解っていたからです)。それを知らない加害者は理解不可能な発言に意味を見いだそうとし、加害者の暴力感情を上回ってしまったのです。加害者はたいてい攻撃のシナリオを頭に描いて行動をしています。被害者が予定と違う行動を取ると、加害者は別のシナリオを用意していないので想定外の状況をまず理解しようとします。

これを、サプライズエフェクトと呼びます。逆説的交渉はこのサプライズエフェクトを強調する作用があります。なぜなら、被害者の行動は想定外なだけでなく、加害者にとって理解出来ないからです。想像してみて下さい、自分に何が起きているかを理解しようとする加害者を、考える事に集中している加害者に危険性はありません。口頭による護身術の章でこの件について詳しく記載していきます。

大騒ぎして、助けを呼ぶ

見知らぬ人の為に人は動いてくれるでしょうか?とあなたは思うかもしれません。確かに大都市ではそういう傾向は強まっているかもしれません。しかし、勇気を持って人助けを成功させた話が後を絶たないのも事実です。従って、助けて貰うことは可能ですので、その正しい方法を説明しましょう。

「助けて!」と叫ぶのはあまり良い方法ではありません。笑いながら助けてと叫ぶことも多いですし、助けることに興味の無い人も多いのです。

「火事だ!」と叫ぶ方が効果的です。卑怯で勇気のない人でも、自分の家や隣に火が移っていないかぐらいは確認するでしょう。そして何より、家の窓が開いて人が乗り出して外を見ると言うことが一番の利点です。加害者が攻撃を諦めるかもしれません。心理的に人は悪いことをしようとするときに、周りに目撃者がいる事を好みません。

大騒ぎをして「火事だ!」と叫ぶ、口笛を吹く、音を立てる、は危険な場面を収束させるのに有効な手段です。あなたが主導権を取らなければなりません。例えば、車の事故が発生し、現場に人が集まる。見ているだけで誰も何も行動しない。皆、卑怯だから行動しないのではなく、皆が行動しないから自分もしないだけです。誰かが救急車を呼んだり警察に連絡をし始めれば、皆行動をし始めます。同じように、暴力を受けたら、自分から行動をしなければなりません。

不特定多数に助けを求めるのではなく、人を特定して具体的な指示を出して下さい。例えば、「黒のジャケットを着た方、警察を呼んで下さい」と言って下さい。注目がその人に集まり、その人は行動せざるを得なくなります。このようにして沢山の人に助けを求めて下さい。

次に助けを求める方法は、公的機関に連絡を取る方法です。暴力に対して、様々な法律が存在します。例えば、怪我をしたら傷害罪、盗まれたら窃盗、しかしこの方法は暴力が終わってからしか活用できないデメリットがあります。海外に行く前には自分の滞在する国の法律を調べることをお勧めします。情報を沢山持っている女性は強い女性です。自分の国や滞在する国の緊急連絡先の電話番号を携帯に登録しておいて下さい。自分以外に誰も自分の代わりに行動をしてくれないと言うことだけは頭に入れておいて下さい。

どのように警察に電話をかけるか

簡単です、とあなたは思っているかもしれませんが、動揺しているときは肝心な情報が相手に伝わっていない可能性があります。以下に必要事項のチェックリストを記載します。

  • 警察の番号をダイヤルする、登録しておくことをお勧めします。
  • 待機メッセージが流れたら決して受話器を置かないで下さい、繋がるまで余計に時間が掛かってしまいます。
  • 電話口に人が出たら、住所や場所を特定できるような具体的な目標を言って下さい。固定電話からの連絡であれば警察で場所を特定するのは簡単ですが、携帯から電話をかける場合、XXX通りだけでなく、XXX町XXX通りと言って下さい。同じ地名は全国に沢山存在しますので。
  • 状況を説明して下さい。ストレートに状況を説明して下さい。レイプされました、刺されましたなど。そうしないと、重要視されず後回しにされる可能性があります。
  • 負傷者がいる場合その数を言って下さい。
  • 警察が到着するまでの時間を聞いて下さい。そうすることで、どのぐらい時間稼ぎをする必要があるか把握出来ます。救急電話は無料です、SIMカードも利用可能です。

また、緊急連絡先に電話をするリハーサルをしてみて下さい。もちろん、その時は固定電話なら電話線を外し、携帯電話なら電源を切って。恐怖に曝されるといつもなら問題なく出来る行動もしにくくなるので、プレッシャーの下で実行しなければならないことは何でもリハーサルをしておくべきです。

火に水をかける

屈辱感や感情をコントロール出来ずに暴力的になる人がいます。多くの場合そういう人は何等かの精神的な傷を抱えています。護身術では境界線を引くことが大事ですが、時には「火に水をかけて」状況を収束させることも必要です。

この方法は「屈辱による暴力」の場合にだけ通用します。屈辱で興奮している人は我を忘れています。その場から逃げてしまえばより相手は馬鹿にされていると感じます。従って、例えば、相手の言っていることを聞いてあげるだけで興奮が収まる場合があります。後にその方法を記載します。

そうはいかない!

最後のストラテジーは対立です。この言葉ですぐに連想するのは喧嘩、暴力、肘鉄でしょうが、そういうニュアンスではなく、自分の置かれた状況と向き合うことを意味します。護身術とは、境界線を引くための全ての術を言います。殆どの女性にとってこのストラテジーが一番実行しづらい物です。

それは社会の中でハッキリ物を言う女性は攻撃的だと言われながら女性は育っているからです。しかし、勘違いしないで下さい、ハッキリと物事を言うとは、自分を尊重し、自分に自信がある証拠なのです。対立のメカニズムは決まっています。自分を守る、余計な混乱を避ける、の順です。

例えば、同居人が手に物を持って興奮していたら、会話をする前にまず手に持っている物を奪うことから始めます。そうすることで、物を壊さないで済みますし、それを相手が凶器として使ってしまう危険性を回避できます。あるいは、映画館で隣に座っている男性が手で足をなでてきたら、その手をどかしながら、止めてと言えばよいのです。手であなたの足をなでられながら話すのも不愉快なだけでしょう?十分に安全を確保してから、自分の境界線を相手に示して下さい。後の章でまた詳しく記載します。

有効なストラテジーのリスト

  • 逃げる
  • 逆説的交渉
  • 大騒ぎをする
  • 助けを求める
  • 火に水をかける
  • 対立する

これで護身術の概要をご理解頂けたと思いますし、ストラテジーの種類も見えてきたと思います。次の章では「敵」について書きます。

[第3章 敵を知る]

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