第6章 口頭の護身術

この章では、有効な「ノー」の言い方、言葉で境界線を引く、自分の希望を相手に実行して貰う方法について説明していきます。まずは、口頭による護身術の注意事項から記載します。口頭による護身術は直ちに身体的な危険が及ばない場合のみに有効です。

つまり、攻撃者が既にあなたの身体に手を出していたら、議論している暇はありません。そして口頭による護身術が効果を発するのは相手が正気を失っていない場合だけです。相手が酔っていたり、中毒症状があったり、あなたの言葉に耳を貸さないようであれば口頭による護身術を使ってもエネルギーと唾液の無駄ですよ!あなたの言い分を聞いてくれないような関係を続ける必要があるかどうかを考えて下さい。この場合、方法は二つに一つです。

  1. 相手との決別になっても境界線を優先するか
  2. 共にいるために境界線を越えさせるか

上記のいずれかです。この選択はあなたにしかできません。口頭による護身術は競争ではありません。自分が正しいと立証する必要も無いですし、攻撃者を黙らせるのが目的でもありません。まして、相手を教育する材料でもありません。目的は一つだけです。境界線を越えさせない、攻撃を止めさせるための物です。口頭による護身術は適切なタイミングで適切な文言を発せられれば非常に有効な武器になります。その理由は、

身体的攻撃を予測できる
口頭による護身術で身体的攻撃を加えるか否かを迷っている加害者に対して強い主張をすることでエスカレートを防ぎ、攻撃を諦めさせる効力があります。
早い時期に境界線を引く
おかしい、と思ったら速やかに境界線を引く。道具的攻撃や権力の違いの攻撃に有効です。被害者の境界線を試す加害者にはとくに口頭による護身術は有効です。重大な攻撃だけでなく日常的な攻撃にも反応し、自分への信頼が深まります。境界線を引く事で、女性が教育の中で洗脳されてきた、大人しく、優しい女性像を打破できます。
自分の境界線を尊重しつつ責任を持って行動する
屈辱による攻撃を避けるのに有効です。我慢ばかりしていたらいつか爆発し、自分や周りにとっても危険である。

自分の境界線を把握して初めて、口頭による護身術を使うことが出来ます。加害者があなたを攻撃する理由は重要ではないのです。大事なのはあなたが不快と感じたら、即その行動は中止されるべきだという点です。相手の頭の中を覗くことが出来ない以上、何を考えているか把握する事は出来ません。解っているのは自分が何を考え、何を感じ、いつ境界線を引くべきか、だけです。嫌がらせをしてくる人は、あなたが意地悪で性格が悪いと主張することで、自分を犠牲者に作り上げてしまいますので、そういう場面では相手を責めずに客観的事実を話し、あなたが望む事を相手に伝えて下さい。

口頭の護身術の妨げになるもの

いつも自分の責任だと思っている

口頭による護身術や他の抵抗の根本的な問題点としてあげられるのは、自分のポジティブやネガティブな面を受け入れられるかどうかという点です。ここでもまた社会的・文化的な性の有り様による大きな違いがあります。

男性の社会的ステータスはその偉業と個性で決まりますが、女性は外見によって決まります。だから女性達はこんなにも人の目を気にしているわけです。ところが、自分の価値を把握し、失敗や未熟な部分を受け入れられたとき、人の目なんかどうでも良くなります。境界線を引く事を無礼や攻撃的だと思う人もいるかもしれません、それはそれでその人の意見であり、自分がそれに屈すことはないのです。そうすると、物事に対する罪悪感も薄れ、人が自分を認めてくれるときにしか幸せを感じられない状態から抜け出せます。内側から強くなれたとき、自分の要求を罪悪感を感じずに、相手に伝えることが出来るようになりますし、人の抱えている問題の責任まで自分が負うのを止められます。

ですから、攻撃を受けたら、境界線を引くのです。相手に謝って貰うためではなく、あなたを不快にさせた行動を止めさせるためです。謝って欲しいと思うのは、相手に自分の事について考えて欲しい、理解して欲しいと言う事になりますので、攻撃を受けた場合は必要の無いことです。相手からごめんなさいの言葉を言わせることに夢中になっていると危険な状況を終息させるのを忘れてしまいます。人の目を気にするあまり、理不尽な批判すら受け入れてしまう傾向が女性にはあるので自分がどうしたいのかをハッキリ自覚して下さい。

口ごもりすぎる

こんな経験は誰にでもあるでしょう。誰かから攻撃を受けているのに、反論する言葉が見つからない、何を言うべきか考えてしまう。そして攻撃の3時間後、名文句が閃くが既に時遅しとなってしまっている。あるいは、相手の態度について注意したいのに、悪く思われたり、怒られたりしたくないために黙ってしまう。攻撃を受けて黙るのは攻撃を拡大させる方法に他なりません。

顔見知りからの攻撃であればあるほどそれを表面化させたくないとあなたは思うでしょう。しかし暴力は公表しなければいけないものです。なぜなら、多くの人に白い目で見られれば攻撃者は弱る可能性があり、周りがあなたを助けてくれるかもしれないし、エスカレートを防げるからです。人に助けて貰ったり、スキャンダルを起こしたりするのは知性と自信の表れです。ですので、女性の皆さんもっとお喋りになりましょう!(井戸端会議のことではありませんよ、女性の皆さん)。逆に沈黙が時として武器になる事もあります。自分をさらけ出してしまうと、相手はあなたを簡単にコントロールできてしまう場合がありますので、状況に応じて対応することが大事です。

女性言葉を話す

教育が私達のコミュニケーションスタイルを決めています。ですので、女性の今日までの教育方針を考えると、当然境界線を引くのが難しいのは言うまでもありません。フランス語や他の多くの言葉は男性優先の言葉で女性の存在を見えなくしています。フランス語の場合、議題の中に男性名詞が1つでもあれば、全ての形容詞や動詞は男性スペルに変換されます。また、Mr,Mrs,Missでもわかるように、男性はMr.だけですよね。何故女性は年齢結婚歴によって区分けされるのでしょうか?

また女性は礼儀正しくないといけないという教育を受けていますから、何かを言うときに真意があまり感じ取れないものの言い方になってしまい、服従を感じさせる言い方になってしまいます。これらの事実が女性を弱くし、他人への依存心を強め、女性は理解不能と思われる原因になっています。男性と女性がわかり合えないのも無理はありませんね!攻撃を受けたら礼儀正しくする必要は全くありません。ハッキリと望む事、望まないことを表現して下さい。誰もあなたの替わりに表現はしてくれません。

あなたは女性言葉を話していますか?

いくつかの事例:

女性が言いたい事 女性が言葉にする事 攻撃者が理解する事
近くに寄り過ぎ、下がって! なんだか近くに寄りすぎているような感じがするのだけれど 本当に近すぎるかは確かではないし近くにいても良いし、そのままで良い
いちいち、物を片付けなさいと言わせないで! ダーリン、居間にまた汚い靴下が置いてあったんだけれど、あなたの? 私があなたの私物を管理しているので、あなたの物に間違いないか確認したいだけ。動かなくて良いわよ!
ちょっと、皆と同じように並びなさい! すみません、私が先だったと思うのですが? 申し訳ありません、恐らく私がいけないのでしょう、それにあなたが割り込んだ証拠もないので…どう思いますか?
あなたと飲みに行く?死んでも嫌よ! 本当に申し訳ないのですが、今夜は先約が入っています。 本当に一杯一緒に飲みたかったのだけれど、残念ながら今夜は無理。次は2つ返事でお受けするわ。
(車内)スピード落として!怖い! ちょっとスピード出し過ぎじゃない?ゆっくり走るのは嫌? 個人的意見ではスピードが出すぎていると思うけれど、私の勘違いかも。大した問題ではないので、そのまま走り続けても良いわ。

また、性暴力には先入観がつきまといます。女性の行動に対する理解も様々です。ある種の服装を身につける、微笑む、カフェで男性と話をする、招待を受ける、プライベートな場所へ男性と行く事が女性にとっては当たり前でも、男性の目にはその女性が性的な関係を求めているように映ります。男性の中には女性がレイプされるのを好むと思い込んでいる人もいます。男性によっては、本当にレイプされたくないのであれば、幾らでも抵抗する手段があり、実際に挿入があったのであれば、それはその女性がそう望んだからで、それはレイプではないと思い込んでいる男性もいます。

だからこそ、繰り返し自分は合意していないと言い続け、間違いなくレイプだと言い続けないといけません。しっかりと自分の望むこと、望まないことを言葉にして下さい。短ければ短いほど、明確であれば明確なほど良いです。

下品な言葉を使い慣れていない

こんな風説があります。女性の「ノー」は「もしかして」と言うニュアンスを含んでいて「もしかして」は「イエス」というニュアンスを含んでいる。この風説は、女性を窮地に追い込んでいます。なぜなら、「ノー」と言っても人は「ノー」と理解してくれないからです。それでなくても女性達にとって「ノー」と言葉にするのは難しいというのに…。困った風説です。

次の状況を想像して下さい。公園のベンチであなたは日光浴をしています。静かなひとときをエンジョイしています。そこへ老婆がベンチに近づきあなたに言う。「座って良いですか?」彼女はあなたに選択肢を与えています「はい」または「いいえ」と応えることができます。あなたは一人でベンチに座っていたい気分。あなたは老婆に「いいえ」という勇気はありますか?「いいえ」以外何も言わない勇気がありますか?言い訳を考えるのではないですか?例えばこんな言い訳「すみません、人を待っているので」あるいは「はい」と不愉快な声で言って相手が辞退するようにする、それとも「はい」と言って老婆が話しかけてこないように本や雑誌を広げる。

ただ「ノー」と言い訳無しに断れる女性は希です。先の章でも曖昧な答えについて触れました。「そうでない方が良い」や「また今度」という答えではなく、一言「いいえ」3文字だけで十分です。「ノー」には誤解はありません。「ノー」は「ノー」です。「ノー」には絶対に理由はありません。理由を付けるとそれは言い訳になってしまい、こちらの立場を弱くしてしまいます。自分の境界線にいちいち理由付けは必要無いのです。自分には自分の境界線があり、それを見せる、それだけです。あなたのノーを受け入れてくれない人や、しつこく拘ってくる人は、あなたの危険信号の警報を起動させるはずです。相手が捕食者である可能性が高いからです。嘘や罪悪感、思わせぶりな物言いをする攻撃者はあなたのノーをノーと受け止めてくれません。

「ノー」に理由付けをしてしまうと服従になってしまいます。あなたのハッキリとしたノーは恐らく相手にとっては嬉しい、気持ちの良いことではないでしょう。相手の不服に耳を傾け受け入れることで、あなたと相手の関係は平等になります。別れるときも、ノーと一言で表現して下さい。別れる事を決めたら、一言『あなたとは終わり』と相手に伝えて下さい。相手のプライドを傷つけず、責めずに別れを言うようにして下さい。さもないと相手はあなたを攻撃してきます。いずれにしても別れの宣告は相手に怒りを感じさせ、暴力へと発展する恐れがあるので、友達に立ち会って貰って別れを告げ、その後二人きりになるシチュエーションを避けるために一時的にシェルターへ避難するのも良い方法です。

矛盾している

あなたは境界線を引いたつもりなのに、相手が境界線を理解していないケースがあります。それはもしかすると、あなたの言葉と態度が一致していないことが原因かもしれません。態度の方が言葉より信じられてしまうことが、コミュニケーションの研究で分かっています。ジェスチャーや態度はメッセージの信憑性の55%を占め、声のトーンは38%、文言はわずか7%しか占めません。態度が伴わないメッセージで境界線を引く事は不可能です。

アサーティブな女性の方が攻撃を受けにくい研究結果も出ています。そういうタイプの女性は状況を良く分析して、状況がエスカレートする前にしっかりと境界線を引いているからです。アサーティブな態度は言語を学ぶように身につく物ではなく、個人の無意識な感情の中に潜んでいます。従って自分の態度をコントロールするには、まず自分の感情を理解する必要があります。このサイトで感情の護身術を先に紹介したのはそれが理由です。自分の感情をコントロールできれば、必然的に態度にもそれが表現されます。言葉と同じく、態度にも文法や語彙がありますので、それを把握しておく必要があります。ではどのような文法や語彙なのか見ていきましょう。

位置
自分は空間の中のどの位置にいるのか?相手と自分の位置は?どちらが相手の空間に侵入して良いのか?どのぐらいまで侵入して良いか?どのように侵入するか?
時間
相手はどのぐらいあなたに話させてくれるか?話しながら自分は何回息づかいをするか?迷いながらジェスチャーをするか?
表情
特に目です(写真で相手を誰か解らなくするために目に黒い線を引くのは目が表情を決めるからです)私達の行動は絶えずメッセージを送っています。例えば、道で人とすれ違うとき、微妙な動作でどちらがどこへ向かうかをお互いが理解するのです。

そして、態度によるコミュニケーションで一番重要なのは顔の表情です。同じ言葉でも、顔の表情一つでニュアンスが変わってきます。例えば、彼とは会っていないという文章をうつむき加減に言えば、その人と会えなくて寂しいというメッセージになります。心配そうな物言いなら、相手がどうしているか気がかりだというメッセージになります。笑いながら言えば、会えなくて清々しているメッセージになります。このように、同じ文言でも態度によって幾らでも解釈は違ってきます。

手紙やメールでのコミュニケーションが言葉のコミュニケーションよりも誤解を招きやすいのもその理由です。相手の言いたいことを理解するためのシグナルが欠けているのです。電話でのコミュニケーションについても同じことが言えます。声は楽器のような物です。ボリュームやトーン、音程や響きで構成されています。女性の声は男性の声より高いのは事実です。社会では低い声は権力の象徴とされていますが、実は社会の洗脳によって、女性はより高いオクターブで話すことを、男性はより低いオクターブで話す事を自然と身につけてしまっているのです。社会的な洗脳による男女の行動や反応の違いを例に取ってみていきましょう(一般的な傾向を記載します)

  • 女性の方が男性よりも場所を取らない(小さい)。女性は足を閉じたり、組んだりして、肘を脇に付ける。身振りも小さいし立ち姿勢も安定感のある物を選ばない。
  • 女性は人の話を、表情やうなずき『うん』の同調語で相手を安心させ、相手を喋りやすくさせる
  • 女性はいつも微笑む、理由が無くても微笑む。相手を落ち着かせ、機嫌を良くさせる。

これらの態度は女性達の責任による物ではなく、小さいときからそうするように躾けられてそうなってしまったことによるものです。親によく言われましたよね。女の子らしくちゃんと座りなさい、その顔は可愛くありませんよ。そんなにムスッとしてたら結婚できませんよ。人が話をしているときは目を伏せなさい、等。

大人の女性が足を広げて、痒いところをかいて、人をじっと見つめてムスッとすると、とたんに下品な女、攻撃的な女のレッテルを貼られてしまい、周りは一般的な固定観念の女性らしさに早く戻るよう女性を促すでしょう。フェミニンとされている仕草でノーと言うと信憑性が薄れてしまいますし、時として攻撃しやすい存在と見なされる場合があるのでノーを相手に伝えたい場合は態度がノーというメッセージを送っていることも確認して下さい。

口実を武器にする

女性の得意技は言い訳です。例えば、長年の友達の太郎君がいました。あなたは彼に友達以上の感情を持っていません。ある日、彼はあなたに恋をします。彼はあなたを飲みに誘ったり、映画に誘ったり、友達に合わせます。あなたは何かおかしいと気付いていますが、彼に直接訳を聞いて、恋愛感情なら無理とハッキリ言う替わりに、口実を考え、彼に言います。「あら、今夜は予定が入っているので残念。えっ?この映画もう観たのよ残念だわ。コンサートは鼓膜が弱いから行けないわ」等。太郎君は全てをたまたま都合が付かなかっただけと思い、あなたが喜んで受け入れてくれると思い、他の誘いをしてきます。可哀想な太郎君…。数週間経ってもあなたは誘いを受け入れてくれず、あなたにその気がないことに彼は気づき、馬鹿にされたと傷がとても深くなります。

女性は何故、口実作りの想像力が発達しているのか?答えは簡単です。人を傷つけたくないと思っているからです。自分が傷つきたくないから口実を考えるのです。嘘も方便と言いますが、抵抗のストラテジーとしては注意する必要があります。嘘をつくとその嘘を隠すために他の嘘をつかなければならなくなり、大変なエネルギーを費やします。また口実の内容によって状況が悪化する場合もあります。

例えば、ナンパされて自分はレズビアンだから興味が無いと断るのは危険です。相手はいい男を知れば男を好きになるだろうと思い込んでしまう可能性があります。月経を理由にセックスを断るのも無意味です。レイプの調査結果によると被害者が生理だと言ってもレイプは続行されるとの結果が出ています。ですから、女性にとって論理的と思えることも攻撃者には通用しないのです。NO、ノーだけをはっきりと言って下さい。不親切な感じがする?残念ながら親切心は女性には許されない贅沢です。親切を愛と誤解する男性もいます。でも、ノーはノー以外の意味を持ちません。

すぐに自信を無くす

ノーとハッキリ言ったのに上手く伝わらなかった。どうして良いか解らなくなり、自分を責めてしまう。境界線を十分に表現しなかった、自分は無能、相手が異常な人、相手が私を嵌めようとしている…。諦めずに何度も何度も同じことを繰り返して下さい。焦点から外れてはいけません。筋が通るように同じ点だけに拘って下さい。

壊れたレコードのテクニック

  • 彼:こんばんはお嬢さん、素敵な目ですね。
  • あなた:興味ありません。
  • 彼:つれない返事だね。
  • あなた:興味ありません。
  • 彼:そんな事言わないで、笑ってよ。
  • あなた:興味ありません。
  • 彼:そんなにムスッとしたら、僕傷ついちゃう。
  • あなた:興味ありません。
  • 彼:そんなに冷たくしないでよ、興味を持って貰えて嬉しいでしょ?
  • あなた:興味ありません。
  • 彼:他に言う事はないのかよ、オウムかおまえ!
  • あなた:興味ありません。
  • 彼:くたばれ!バイタ!

あなたは冷静に動じることなく、同じ主張を繰り返して、相手を疲れさせて、攻撃を止めました。

あなたには自分を守る権利がある

礼儀正しさは攻撃を受けた場合の抵抗能力を低下させることは前の章でも説明しました。女性は礼儀正しくすることで身体的対立を防げると思っています。人から好かれるには丁寧で優しければ良いという思いは境界線を引く上では障害となりますので、その観念は捨てて下さい。

無礼に振る舞う権利がある

常に無礼な態度を取る、と言う意味ではありません。必要な時には無礼になる事を自分に許して下さい。攻撃をされて「恐れ入りますが、そのようなことは止めて頂けますか?」と長い文章を言っている間に様々な攻撃を受けてしまいます。「ストップ!」と一言だけ言って下さい。無礼なことを言うのは攻撃や罵りとは異なります。攻撃は無礼であること以上に、認められない物なのです。無礼な振る舞いとは、微笑みを浮かべず、真剣に自分の考えている事を相手の目を見て、言い訳せず話す事です。

自分の事、自分の感情を人に真剣に話す権利がある

「あ〜、女性はなんて感情的でヒステリックなのだろう!」こういう固定観念の中で自分の感情を主張するのは簡単ではありません。しかし、感情には理由があり身体の自然な反応なのです。その感情をどう処理するかは自分の責任です。人がどう思おうと、自分の感情を表現する権利が、あなたにはあるのです。真剣に取り合ってくれる人がいなくても表現することから始めなければ、誰にも理解はして貰えません。

自分の意見、自分が望むこと、望まないことを言う権利がある

人の意見を無視して説得だけするタイプの人達がいます。相手と同意見でないと悪く取るタイプの人もいます。私はこういうタイプの人とは関わらないようにしています。彼らと話をすると意見を持つことに罪悪感が生まれ、相手に従わなければならない気分になります。ですけれど、人権でも言われているとおり「全ての人に表現や意見の自由がある」のです。現在はこの文言の通り表現の自由もかなり広がりましたが、おばあちゃんの時代までは女性に発言の権利はありませんでした。レストランへ行っても、男性がボーイと話し、女性は隣で置物のように大人しく待つのが常でした。レストランでは女性に価格の入ったメニューは渡されず選択できないようにされていました。なぜなら、男性が付き合っている女性の好みを知っており、男性の方が美食家で、男性が命令する物で、男性がテイスティングをする物で…、言い過ぎのように感じるかもしれませんが、今でも女性が何かを決断すると、周りはその決断が間違っている、考え直すように説得します。

例えば、私の知っている老婆は、年金暮らしでお金には困っていませんが動くのはあまり好きではなく、通信販売で買い物をすることが大好き。子供達はお金の無駄遣いだ、騙される、無責任、自分たちに相談しろ、と言って彼女を屈辱的な気分にさせ、罪悪感を持たせます。その理由は彼女が自分のお金を親類の了解を得ず、自由に使っているからです…。別の例。聡明な17歳の女の子が学校へ行くのを止めた。周りは、決心するのはまだ早すぎる、若すぎる、自炊するのは大変だ、資格を取ることが大事だ、と責め立てる。しかし、彼女の望んでいる事を聞く人は誰もいません。彼女の選択肢を広げるために、オリエンテーションセンターへ行かせればいい物を、彼女の自信がなくなるようなことしか周りは言わない。もう一つの例。車椅子の女の子が女優を夢見ています。障害者がそんな高嶺の花のような夢を持つべきではない、諦めなさいと周りは説得する。でも映画で障害者の役を演じる人物は誰ですか?彼女の前に誰もやったことがなかったとしても、彼女がその最初の人になるかもしれない。私達には自分の望む事を表現する権利があるのです。

理解出来ない権利がある

例えば、人に道を尋ねて理解出来ないと「解りませんでした」と言わずに、そのまま進んで途中でまた誰かに聞いてみればいいと思ってしまう。同僚が何か理解出来ないことを言うと、一晩中「どういう意味だったのかしら?ジョーク?行間を読まなければ行けないの?何故そんな事を言ったのかしら?」と考えがちです。その場で「解らなかったからもう一度説明して」と言えばことはスムーズに解決するのに。

あるいは医者に行って病名についてあれこれ理解出来ないことを説明される。聞き返さずに、言われたとおりの何に効くかも解らない薬を飲んでしまう。何故このような行動を取ってしまうのか?馬鹿だと思われたくないからです。ですが、理解出来ないのは当たり前で即答できないのも当たり前のことです。解らないときは「もう一度説明して頂けますか?」と聞き返すようにして下さい。

どうすればいいか?

パラベラムのストラテジーのおさらいをします。

会話、ユーモア、屈辱、攻撃を無視する、攻撃者のプライドを傷つける、はリスクが多く成功率の低いストラテジーです。第三者や機関に助けを求める、危険から逃げる、火に水をかける、境界線を引く、は成功率の高いストラテジーです。これらのストラテジーを実行するのに受けてきた教育や社会から受けてきた洗脳を忘れなければ行けませんので時間が掛かります。

リスクの少ない練習を日々実施して下さい。パラベラムではゲーム感覚で練習をするようにしています。例えばある状況を演技します。相手にまず状況を説明して、あなたが希望する役割を演じさせます。あなたはそれに対応する役を演じます。こうして、難解だったとしても違うストラテジーを試しながら、実際に攻撃をされたときに備えて準備をしていきます。私からのアドバイスをいくつか記載しますね。

限度を設ける

ハッキリとした目標を持たないと相手は、あなたのエネルギーを自分の目的達成のために使ってしまう恐れがあります。私達の目的は攻撃を止めることです。確たる目標を示して下さい。例えば「人前で私を馬鹿にするのは止めて」はネガティブな内容をポジティブに表現しているので言わないようにして下さい。代わりに「私を尊重して」とポジティブな内容を言って下さい。何故か。理由は二つあります。

  1. 攻撃者の行動を基本にした目標だと、攻撃者が状況の中心人物になってしまいます。
  2. ネガティブな内容は想像力を半減させてしまいます。

自分を守る

加害者の攻撃が、感情だけでなく、身体にエスカレートしないようにするのがポイントです。ですから、口頭の抵抗を行うときは必ず別の手を用意して下さい。そして、どのプランもうまくいかなかったら、とにかく、その場所から逃げるための出口を探して下さい。

攻撃者とは最低でも腕一本分の距離を保ち、不快感などの直感を感じたら、どうにかして攻撃者と自分の間に物が入るようにして下さい。テーブル、椅子、貴方のバック、他者など。なるべく攻撃者が自由に身動きが取れないようにするため座ることを促して下さい。攻撃者から目をそらさずいつでも身体的攻撃を受けたら自分を守れるようにしておいて下さい。

言葉の抵抗の法則

口頭の抵抗には幾つかのステップや法則があります。口頭で抵抗を成功させるには、

  • 自分の感情や直感で危険信号を察知し、一刻も早く境界線を越えられた瞬間を把握する。
  • 抵抗のストラテジーを実行できるよう冷静さを保ちましょう。感情的になってしまうと攻撃者の感情が見えなくなり抵抗がかけられなくなります。感情的になってしまうと無意味な行動が多くなります。言い訳、会話、無視する、罪悪感、威嚇。
  • 攻撃者を真剣に受け止める。状況をエスカレートさせたくなければ、相手の価値観を認めないと行けません。攻撃者に対して、してはいけないこと、皮肉を言う、侮辱する、プライドを傷つける、行動ではなく人格を否定する。
  • 状況の把握と見合ったストラテジーを選択する。ストラテジーをいつでも変更出来るようにフレキシビリティーは残す。
  • 自分と攻撃者のために逃げるための出口があるのが好ましいです。攻撃者の身動きを取れなくするとストレスになり、パニック状態に陥り、身体的攻撃をかけられる可能性があるので、逃げ道は攻撃者にも必要です。
  • ハッキリと明確にストラテジーを実施する。
  • 攻撃者の気を引く。ベラベラ喋るだけではダメです。佐藤さん、鈴木さんというように名前を使って話しかけて下さい。
  • 自分に誠実であり続ける。
  • 終わりを知る。いつまでも、その場に留まらないこと。状況が終息したら、すぐに立ち去って下さい。

自分の感情と態度を合わせる

言葉、声、態度は同じメッセージを発していないと行けません。丁寧語を使わず、単刀直入に望む事を言う。自分の希望を過小するような言い回し方をしないで下さい。悪い例、「貴方とは話したくない」と10回言ってしまったら、9回余計にしゃべり過ぎています。

声を使う

声は身体的護身術や口頭の抵抗で重要な武器の一つです。「屈辱による攻撃」にはキーキー甲高い声より、落ち着きのある声の方が有効です。対立の場合は支配的な声が有効です。女性は声を使い分けるという観念が欠落しているので、忘れないようにして下さい。声を十分に意識するにはしっかりとお腹で呼吸をすることを癖にして下さい。

お腹で呼吸をする

お腹に手を置いて下さい。息は鼻から吸うことで暖まった状態で肺に入ります。吐くときは口から。繰り返して下さい、吐くときは肺が空っぽになるまで吐いて下さい。音を立てても構いません。手でお腹の動きを確認して下さい。吸うとお腹は膨らみ吐くと引っ込む。声帯を動かすため呼吸で空気を送り込みます。

高い声は喉から、ミドルトーンは胸とお腹から発します。色んな発声の練習をして下さい。例えば、数字(言葉だと雑念が入り表現の邪魔をする可能性があるため)を使って色々な表現を練習して下さい。声を発することで他人は貴方に注目します。例えば、公共の場で叫ぶのはよい防衛のストラテジーです。自分の声が優しすぎると思うなら、お風呂場など人から聞こえないところで発声練習をして下さい。

口頭以外の表現法を取る

ウンザリしていて、もう本当に「ノー」の気分でいる事を口頭以外の表現で示してみましょう。気をつけて下さい。口頭以外の表現が感情とマッチしていないと嘘っぽく見えますし、演技だと思われてしまい、状況をエスカレートさせてしまう恐れがあります。

真剣に聞いて欲しい時の立ち姿勢、足を腰幅ぐらいに広げて立つ。背中はまっすぐに肩を引いて下さい。偉い人が良くこの姿勢で立つのは権力を表す姿勢だからです。立ち姿勢の安定感で自分の自信、簡単に折れないこと、相手に危害を加える気がないことを表現します。いつでも身体的抵抗に移れる姿勢なのでとても有効です。腕は身体に沿わせても良いです。腕組みはしないで下さい。威嚇だと思われる可能性があります。そして自分を守るのに腕を組んでいては抵抗を実行できません。腕を身体に沿わせる以外に腰に置く事も良いです、肘を外側に向けることで、自分を大きく見せられます。ジェスチャーで表現するのも良いでしょう。ストップと言いながら手でストップを表現する、あっちへ行ってと言いながら出口を指で指す。ジェスチャーはゆっくりと迷い無く、決して攻撃者の顔を指で指さないで下さい。また、人差し指を立てて喋るのも威嚇と思われ状況をエスカレートさせる恐れがあります。

顔に笑みを浮かべない。無表情で真剣な顔つき。怒りを表現するのに眉間にしわを寄せて怖い顔をするのも結構です。目は常に攻撃者を直視し、自分の境界線を越えるのを止めるまで注視し続けて下さい。鏡の前で練習をするといいでしょう。鏡の前でポーズを取るのは照れくさいかもしれませんが、自分がどんな風に人に見えているかを確認する方法は鏡だけです。女性は無意識のうちに常に微笑みを浮かべてしまう癖が付いています。それは「優しい女の子」を演じるのに慣れてしまっているからです。鏡の前で目を閉じて、自分が思う、真面目なポーズを取って下さい。そして目を開けて、どんな風に映っているかチェックして下さい。

そして、鏡を使ったもう一つの練習方法は「表情のスイッチ」です。笑顔、無表情、笑顔、無表情を続けて練習して下さい。それ以外に、丸一日、理由無く微笑みを浮かべない練習をして下さい。周りが貴方に『今日はどうしたの?機嫌が悪いの?』と質問したら、貴方は今まで毎日、四六時中微笑んでいたと言う事になります。

逃げの術

走って逃げるという意味ではありません。攻撃者に対して、どう答えて良いか解らないとき「答えを考えます」「答えが見つかったら言います」や「考える時間が必要です」と発言することによって、怖いから逃げるのではなく、攻撃を真に受けていて、それに対抗しようという姿勢を表現できます。行動的で手強い被害者を演じるのです。

そして、先に紹介した文言は自分がいつ境界線を引くかの選択肢も与えてくれます。忘れないで下さい、全ての選択肢は貴方の手の中にあるのです。必ず攻撃者の質問に答える必要はありません。逆に毎回相手に構ってしまうと、こちらの行動が読み取られてしまい、相手の思うとおりのシナリオに陥る可能性があります。

自分にとってそんなに重要ではない攻撃という物もあります。そういう時は、ただ単に答える意思がないと言う事を相手に解らせればいいでしょう。言葉を使う必要はありません。例えば、深いため息をつく、目で空を見上げる、肩を落とす。言葉の方が使いやすいなら、「はいはい」「あっそう」「あらまぁ」「そうなんだ」で対応してください。この手の返事をすることにより会話は続かなくなり、攻撃者は不意打ちに遭います。会話をしていて、不快な気分になったら、話題をさりげなく変える方法もあります。これは相手が何を言い出すか解っているときに使うと有効です。

例:私の母にははっきりとした結婚観があり、私には私の結婚観がありました。お互いの意見をお互いが知っている。私が実家を訪ね、母の話題が私が未婚で子供がいないため将来の生活や社会保障の心配に及ぶと、私は話を三人の子供を出産している従姉妹の話に切り替えました。

切り替える話の内容は一般的な物を選んで下さい。ガソリン価格の上昇、テレビ番組、相手が好きそうな話題など。話題の切り替えを簡単にする文言は「そういえば、思い出したんだけど」「全然違う話だけど」、相手が「話をそらすんだ」と言ったら「護身術の本で話を変える方法が書いてあって」という具合にまた別の話題に話を移していって下さい。

逃げの術は病理的攻撃にも有効です。理解不能な人とは接触しない方が良いので、相手と目を合わせないようにして、周りに危険な物があればそれをどかして下さい。どうしても会話をしなければならないシチュエーションになったら、相手の言う事を肯定して下さい。話の内容に相手が興奮しだしたら、話題を変える努力をして下さい。

どのように言葉だけで攻撃者を動揺させるか

攻撃を受けたら、加害者の予想に反する行動、意味不明な行動、驚くような行動で加害者を動揺させ、攻撃を止める方法です。このテクニックは道具的攻撃や病理的攻撃、屈辱の攻撃にも有効です。(例えば:区役所で待合室の家具を破壊している攻撃者は、職員がいきなり一緒になって資料を投げたら驚くはずです。ただし、この方法は上司や自分より権力のある人には使わないで下さい)。どうしても、喋ってしまいそうになる…と言う場合、次の方法を教えます。

その時の会話と全く関係の無い、諺、4文字熟語、歌詞のサビの部分、有名な詩、仏典、聖書やコーランの文言、広告のスローガンを言って下さい。攻撃者から不快な事を言われたら、先に記載のいずれかを真剣な口調で言って下さい、まるで重要な意見を通した以下のような雰囲気で。すると攻撃者は必然的に貴方の言葉の意味を考えます。相手が悩んでいる間、貴方への攻撃は中断されます。攻撃者から文言の意味を求められたら、さらに相手を考えさせる文言は「えっ?明確なのに!」です。

そして、なんらかのこじつけで攻撃者が文言に意味を見いだしたら、あなたは次のように言って下さい「私の言いたかったことは全くそうじゃない、考え過ぎよ」これは私の大好きな方法の一つです。簡単に面白く相手に復讐できるからです。そう、相手が、あなたを傷つけようとすればするほど、あなたの発した文言を相手は考えるのです。

この方法を使うときの注意点はあなたの文言が決して意味を含まないことです(例えば「神よ哀れな者を救い給え!」哀れな者を加害者が自分と思ってしまう恐れがあります)本当の復讐はナンセンスの中にあるのです。

嫌味のない確認の術

加害者が攻撃をするとき、被害者のネガティブな反応を期待しています。私達はその期待にまんまと応えてしまっている場合が多いです。言い訳をしたり、説明をしたり。それは攻撃者にとって好都合なことなのです。しかし、相手を黙らせるのに、嫌味のない確認の方法をとることは出来ます。同調すると、相手は次のコミュニケーション材料を無くすので動揺します。例えば、「えっ?そんなに疑い深いの?」と言われたら『そう』と答える。全面的に同調したくない場合は、「え?そんなに疑い深いの?」に対して『そうね、私は敏感なの、ありがとう』と答える、あるいは『俺の仕事にケチを付ける気か?』に対して『そう、間違え探しに私向いているの』と答える、「上司にいい顔して恥ずかしくないのか?」に対して「あなたの言うとおり全ての職場の人間と仲良くすることは大事だわ」という。

軽い口頭の護身術のおさらい

  • ハイハイの二言返事
  • 話題を変える
  • 意味のない諺
  • 嫌味のない確認

どのようにエスカレートを防ぐか

これから記載する内容は「屈辱による攻撃」に有効なテクニックです。感情を爆発させてしまった攻撃者は、あなたの言う事に耳を傾けません。境界線を示してしまえば、攻撃者の屈辱感が増す可能性があります。エスカレートを防止するテクニックは攻撃者の望みに歩み寄るスタイルのテクニックです。しかし注意が必要です。自分の怒りをコントロールしている攻撃者(あなたを弱くするための攻撃の場合、道具的攻撃になります)と、怒りにコントロールされてしまっている攻撃者を見分ける必要があります。そうしないと、マインドコントロールを得意とする攻撃者の罠に掛かる可能性があります。

違いは屈辱による攻撃では相手や場所を加害者が選択できていないと言う事です(極端に言えば、加害者自身が危険にさらされる場合もあります。例えば、上司に対して爆発してしまう=解雇の怖れ)。屈辱による攻撃はアドレナリンの上昇により行動に変化が現れるので、爆発の前にエスカレートを防ぐため、次のような言葉をかけてみて下さい「怒っているようですが、間違いないですか?話し合いましょう」や「なんかちょっと気まずい感じがするけれど、何があったの?」このように話しかけることで、問題点が把握出来ますし、相手は感情を表に出せます。

攻撃者は世界全体が自分の敵になっている気分から解放され、あなたに親近感を感じます。攻撃者が薬物の影響下にある場合はあなたの態度に注意して下さい。真剣な態度で相手を尊重し、ポジティブで相手に興味があることを示して下さい。もし事前にエスカレートを防止できなかったら、自分の感情のコントロールと言葉ではなく行動での表現、激しい攻撃になった場合の自分の安全確認、攻撃者に脱出の可能性を残してあげること、決して攻撃者に触れない、攻撃者となるべく距離を置く事に集中して下さい。

言葉一つで状況は簡単にエスカレートしてしまいます。例えば一言「だから言ったじゃない」「自分にも経験があるけれど」等は言わないで下さい。攻撃者が沈黙したら、あなたが発すべき言葉は「つまり、私が理解したことによると、某が某で起きて」と攻撃者の言ったことを繰り返す、もしくは「それは本当に腹立たしい状況ですね」です。相手を助けようとしていることを感じさせる全ての言葉は有効です。してはならない事は、微笑むこと、相手のプライドが傷つく事はしないで下さい。

どのように境界線を示すか

自分の境界線を示す簡単なテクニックを幾つか記載します。

防衛になる質問をする

相手の一言で私達の境界線は越えられてしまい、傷つく事が良くありますね。それは自分にとって破壊的な発言だったり、自分の弱点を突いた発言だったりします。どちらの場合も防衛になる質問で対応して下さい。

簡単です、相手の毒のある発言が理解出来ないので説明を求める。攻撃者に「君の企画書は完全に話にならない」と言われたら「話にならないとはどういう意味合いですか?」と真剣に説明を求めて下さい。このテクニックはグループ内で攻撃者が、あなたの立場を引き下げようとするときに特に有効です。あなたが質問をする事で相手の本性が大勢の前であらわになるからです。

攻撃者のモチベーションを指摘する

自分がまるで部外者になった気分で、攻撃者の行動を指摘する事で長時間の議論をせずにすみます。

例えば「私と直接この問題を話し合わないで、みんなの前で私を侮辱してあなたに何の得があるの?」「何故二人の問題の責任を私一人が取る事があなたにとってそんなに大事なの?」

ゲームのルールを明確にする

攻撃者が権限を持っている場合(先生や裁判官)、一般常識に於ける礼儀を武器にして下さい。

例えば「公私混同はしたくありません、落ち着いて会話を進めて頂きたい」「相手の会話を遮ることなく一人一人最後までそれぞれの言い分を話すべきだと思います」と言って下さい。

スリーセンテンス・テクニック

このテクニックが最も論理的で有効です。効果的に境界線を示せますし(例えば性的攻撃の場合)、攻撃者との関係を断絶しないで済みます(例えば職場で解雇にならないで済む)。以下がそのステップです。

第1センテンス:不快な行動を明確に指摘する

その時、自分に起こっている事を言葉で説明する。攻撃者は言葉で示されたその現実に、行動を改める可能性があります「あっ、本当だ、ごめんなさい」と。

例えばバスの中で痴漢にあったら、大きな声で「いい加減にして、このゲス男」と言っても何の解決にもなりません。周りはあなたをヒステリックな女と思うだけです。代わりに「あなたの手が私のお尻の上に置かれています」と言えば、周りは同調し助けてくれるかもしれませんし、攻撃者が恥をかきます。以下が不快な行動を明確に説明する文言の例です

  • あなたの手が私のお尻の上にあります
  • 私の言いたい事はまだ終わっていません
  • あなたは私の足の間を見ています
  • あなたは私を雌牛と言っています
  • あなたは自分の靴下を片付けていません
  • あなたは私の綺麗な目を褒めています

第2センテンス:受けた行動をどう感じたかを説明する

第1センテンスで攻撃が止む事もあります。だからといって、そこで終わりにしてはいけません。周りにいる全ての人に自分がその行いに同意していない事をハッキリと表明しないといけません。境界線を越えられてどう感じたかを言って下さい。

注意:言い訳をするのではなく、行いに対する感覚だけを説明して下さい。言ってはならない文言「こんなこと認められないわ、失礼じゃない」は感覚ではなく、価値観の評価で、ここでは全く無意味なものです。以下が使うと有効な文言です。

  • それは好きじゃない
  • イライラする
  • 不快な気分になる
  • 全然面白いと思わない
  • 同意できません
  • 吐き気がする

第3センテンス:具体的な要求をする

ここまで来ると、攻撃者は居ても立ってもいられなくなります。第3センテンスはさらに攻撃者を追い込むものです。第2センテンスで終わらせると、攻撃者は「だからなんなんだ?」と言う可能性があります。ですから具体的な要求をして下さい。例えば

  • 止めて
  • その部位から即、手をどけて下さい
  • 二度としないで
  • 今後は気をつけて欲しい
  • 落ち着いたらまたこのことについて話し合いましょう
  • もう終わりにしましょう

スリーセンテンス・テクニックのまとめ

  • 指摘する
  • 感覚を説明する
  • 要求する(命令)

このスリーセンテンスはどんな状況にでも対応するものです。例えば、ほとんどの状況に使える究極に短く、明確で効果的なスリーセンテンスは、「あなたはしつこい、私はそれが嫌い、さがりなさい」です。

攻撃を否定してくる加害者には次のスリーセンテンスが有効です。「不快な気分になる必要が無いとあなたは言うけれど、尊重されていない気分になる、私の感覚は私が一番よく知っている事を認めなさい」。

一人で喋り続ける加害者には
「私に喋らせてくれない、ストレスを感じます、私の言い分を聞きなさい。」
曖昧なものの言い方をする加害者には
「あなたは抽象的な話し方をする、理解出来ない、何が言いたいか説明して下さい。」

攻撃が止まない場合は壊れたレコードのテクニックを交えると良いです。同じスリーセンテンスを攻撃者が飽きるまで言い続けて下さい。スリーセンテンスは愛情や友情を感じている人との関係でも使えます。

自分が友情以外の気持ちを持っていない人から恋愛感情を示されたら
「○○さん、私に友情以上の感情をお持ちのようですが、残念ながら私は友情以外は感じていません、友達のままでいましょう。」
自分が全く好きではない絵画や詩の話を友達からされたら
「○○ちゃん、私の意見が知りたい?嘘をつくべきか、あなたを傷つけるべきか迷ってしまうけれど、友情の証だと思ってくれると思うので、正直に言うと、その絵は好きじゃないわ。」
電話をしなさ過ぎるとあなたを責める母親に対して
「ママの事を考えていない、とママは言うわね、傷つくのよ、好きなときに電話をさせて。」

どんな感情的なしがらみの状況においてもスリーセンテンスはあなたを救ってくれます。

相手のコミュニケーションの罠に乗らない

攻撃者は魚に餌をやるような感覚で攻撃をしてきます。そして、その餌に魚が必ず食いつくと思っています。例えば先ほどのスリーセンテンスのお尻を触られた例を取ってみましょう「あなたの手が私のお尻の上にあります、気に入りません、即その手をどけて下さい」こう言うと攻撃者はどんなコミュニケーションをしてくるか?

攻撃者の答えの例「凄く混んでいて、手の置き場が他にないんですよ!(言い訳ですね)」「願望を現実のように言っているんじゃないの?(相手に罪悪感を感じさせようとしている)」「このバイタ!(侮辱)」「そんな言い方差別だ!(まったく的外れな答え)」。被害者のスリーセンテンスは次のコミュニケーションを不可能にしている事がご理解頂けますでしょうか?加害者が攻撃をし続ける限り、スリーセンテンスを繰り返して下さい。

どうにもならなくなったら、交渉をする

危険すぎてすぐに行動する事が出来ない場合もあります。例えば、誰かが金銭目的で武器で脅してくる場合です。その場合初めて、交渉というテクニックを使って下さい。それは泣く、とかお願いする、と言う意味ではありません。交渉は冷静でなければ出来ません。この場合、ポイントになるのは攻撃者に同調しているように「見せかける」ことで、こちらが反撃しないであろうことを理解して貰うのです。

ただし相手の攻撃プランを少し変更して貰うのがポイントです。窃盗の被害者は交渉する事で自分にとってとても大事なものを持って行かれずに済んだ例もありますし、お金だけ渡して、お財布や身分証明書類は持って行かれずに済んだ例もあります。レイプ時に、交渉により、加害者にコンドームの着用や、特定の体位を拒否する事に成功した人も居ます。頭に残っている話を記載します。

一人で畑仕事をしていた農婦が通りがかりの若い男に攻撃をされました。男性は彼女をレイプしようとしました。彼女は加害者に、地面では具合が良くないので一時間後にもう一度立ち寄ってくれればシャワーと着替えを住ませて待っているわ、と言いました。一時間後花束を持って攻撃者が訪ねてくると、待っていたのは警察でした。従って、絶望的な状況でもなんらかの口頭によるテクニックで状況が終息する可能性があるので、迷う事はありません、試してみる事が重要です。

[第7章 身体の護身術]

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